2015/11/29

5手ばか詰を考えよう(6)


■龍で詰める

記事の構成はここまででだいたい把握できていると思いますので、サクサクいきます。


普通詰将棋でもおなじみの形としてはコレ。ばか詰でもよく出てきます。
2015-11-26a.jpg


前の記事で「支え駒としての角を分類するならば2種類だ」みたいな趣旨のことを書きましたが、そういえば上の使い方もありましたね。

でもこの形も有力です。やっぱり角はこうやって使いたい。

2015-11-26c.jpg


下の形も効率が良い。

2015-11-26e.jpg



勝手がわかってきたところで、早速作例を見ていきましょう。

○佐々木寛次郎氏作(詰将棋パラダイス 2006年7月)
6Tm (2)

85龍 64玉 94龍 75玉 74龍 まで 5手
開き王手すると思わせて…?


つくる側としては、このように無駄のない構図を発見したときほど嬉しいことはないでしょう。

○山田嘉則氏作(詰将棋パラダイス 1983年10月)
6To.png

59香、64玉、58飛、63玉、52飛成 まで5手
二段ロケットのための最遠打。明快なメカニズムです。


この狙いでは作者自身による別図があったかもしれません。如何せんいま手もとにあるものでは調べる余地がなく、ここではFairy Databaseに収録されているものを載せています。もし不都合があればご連絡ください。

○橋本孝治氏作 (詰将棋パラダイス 1982年7月)
6Tn (2)

46飛、65玉、63飛、54玉、43飛上成 まで5手

完成品でしょう。手の加えようがありません。


解答は例によって白抜き。


詰め上がりによる分類は次回がラストです。
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2015/11/27

5手ばか詰を考えよう(5)

■角で詰める
 この詰め上がり。例にもれずモデルメイトを目指します。

2015-11-26f.jpg

 最終手角打が多い形です。ばか詰では透かし詰めがないので、そのおかげで非限定は避けられています。
 
 今回も支え駒に注目しましょう。そこで囲碁用語の「ケイマ」が登場します。囲碁はさっぱりわかんないですが、ちょうどいい言葉なので逆輸入しました。

wikipediaより(一部抜粋)
ケイマは囲碁において、すでにある石から横に二路、縦に一路(または横に一路、縦に二路)離れた位置関係のことを指す。英語では "knight jump" 。

55の玉に対してのケイマの位置を青色に塗ってみました。
6TN.png


この位置に龍を据えると、効率よく玉を包囲できるようです。

ではこの詰め上がりでの実例を見ていきましょう。

○長谷繁蔵氏作(詰将棋パラダイス/2004年4月)
6TM.png


難解な5手ばか詰として有名ですね。ご存知の方も多いと思いますので答えも載せてしまいます。



44龍 63玉 33龍 54玉 63角 まで 5手

〈↓詰め上がり図 63角まで〉
2015-11-26g.jpg


ケイマの位置の龍が2枚もいます。
そして新手筋として「龍ソッポ」も出てきました。すこぶる頻出の手筋です。ソッポの手筋に関してはまた別記事にまとめる予定ですが、龍ソッポの目的として、玉と龍でケイマの位置関係をつくるためのものが頻度としてかなり高いことは覚えておいて良いと思います。

■桂で詰める
吊るし桂しかありません。早速実例を見ていきましょう。

○勇者ロト氏作(2011/7 詰将棋パラダイス)
6TS.png

53龍 32玉 62龍 41玉 53桂生 まで 5手
ダブルソッポです。


○DD++氏作(2013/6 WFP内 解くのに頭を悩ます5手協力詰作品展)
6TR.png

47龍、26玉、23龍、35玉、27桂 まで5手
上下から「ケイマの龍」で挟み込みます。
当然出題時はヒントがないわけで、難解性に特化した本作の紛れの海をさまようことになったでしょう。



先ほど述べた龍の使い方を参考にすれば、きっと解けるはずです。

龍とは関係ありませんが、以下のように盤端の玉に対しての桂吊るしも有力ですね。

○神無太郎氏作 (AWAKEN 41 1993/9 詰将棋パラダイス )
6Th.png

55馬、44角、22歩成、同角、23桂 まで 5手
逆王手を防ぐため、33地点ではなく44地点に合駒させる。


解答はそれぞれの図の下あたりに白抜きで置いています。
2015/11/25

去年の短コン

詰パラ来月号では短コンが開催されます。今から待ち遠しいですね。

ふと気が向いたので去年の詰パラ12月号を読み返してみました。
去年の短コンは11手。今年は7手詰ですから、趣も結構異なりそうです。

㊴が話題になっていたなあ、㊾もいいなあ、そんな記憶が思い出されます。

最近の傾向として一手の主眼というより、ある一連の手順を塊として捉え一つの統合された狙いとする作品が(特につくる側には)人気になってきたように感じます。わかりやすい例で言えば、駒の一回転とか。

しかし去年の短コンで一番好みだったのはこれ。

海老原辰夫氏作

6TD.png

手順省略

それだけで一作を支えうるほど、初手に強度があります。捨合の変化処理も明快で気分がいい。疑問点が複雑な論理で解決されるのも一つの方向性ならば、逆に即解決するのもスマートな方向性だと思います。少なくとも本作はその方向性で成功しています。
そしてその初手の駒を捨てての収束。完璧な構成です。論理ではなく印象として、初手と収束がつながっているように我々は感じるのです。一手の余韻が作品全体に伝播するような、そんな気さえしてきます。

視覚的に把握しやすい駒の軌跡に頼らなくても、人間の感性によってでも作品は統合されうるのではないか、そう思わされた一作でした。

うーん、日本語が拙いものですみません。


--------

12月号の結果稿を読み直すと、この作品も目に留まりました。

短12 天内啓介氏作

6TC.png


好みど真ん中です。これは本当にいい。破調の生じる原因が「趣向手順を続けたこと」にある点が実にエレガントだと思います。
2015/11/22

スマホ詰パラ No.4341

フェアリーばっかやってると「誰が見るんだこのブログ」って有り様になりそうな予感がしたので、ここらでちょっと伝統詰将棋の自作にも触れときましょう。

スマホ詰パラ No.4341
2015-11-22a.jpg

46馬、(イ)35桂、同馬、23玉、41角、32桂、24銀、12玉、13銀成、同桂、24桂、同桂、22桂成、同玉、44馬、12玉、
23角成、同玉、33香成、12玉、22成香 まで21手詰


作意は作意でいいのですが、(イ)の変化が非常に難しい。

(イ)35歩では同馬、23玉(12玉なら13歩)、24歩、32玉の局面で42桂成が英断の一手。
2015-11-22b.jpg


以下同玉に64角が限定打になっています。この角打に対して(ロ)52玉と逃げたときに53馬、61玉、62銀、72玉、73銀成、81玉、82成銀を用意しておくためです。
(ロ)41玉も42銀、32玉、44馬の筋から33地点に殺到すればOKです。
(ロ)51玉は62銀、41玉、42角成!、同玉、53馬、41玉、31香成でピッタリ。
よって(ロ)32玉と逃げますが、これには31角成が決め手。同玉、53馬、22玉、31馬、12玉、23銀、11玉、22銀成で2手早いです。



偶然な変化たちなのに、なんでこんなに捨駒がポンポン出てくるのか!?

とまあ、詰むのかかなり不安になる変化たちでした。
24歩の瞬間の不利感が半端じゃありません。この瞬間は作意順と同様41角のほうが妥当でしょう。この手でも詰むものの手数オーバーの変別に陥ってしまいます。うーん、柿木さまさまですね…。

動く盤(フラ盤様)も用意してみましたので、そちらでも並べてみてください。

2015/11/21

Web Fairy Paradise 第89号

将棋部は大会で遠征中。
かくいう私はソフトテニス部の対外戦のほうに参加してました。弱いので大してボールに食らいつけないんですが、でも疲れた。うーん

さて詰キストが月末や月の初めを心待ちにしているように、フェアリストたちは加えて毎月20日も心待ちにしています。
そう、Web Fairy Paradise(略してWFP)が発行されるのです。
そして今月のカレンダーをみてみると、いつの間にか20日になっているのです!これは読むしかない。

今月号はこちらのページから。
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/wfp.html


私はWFPがなかったら多分フェアリーもやってないし、フェアリーやってなかったら普通詰将棋も続けられていないだろうし、恩師のような存在です。発行者でもあり、解答者でもあるたくぼんさんにはいつも本当にお世話になっています。ありがとうございます。


WFPは難しい、そんな印象があると思います。私もそう思います(前述べた通り、フェアリストなのに掲載作の多くを理解しておりません)。しかし全掲載作が複雑怪奇なルール、超越的な作品かというとそうでもなく、パラ本誌のフェアリーランドに載っていてもおかしくないような、いい意味で「普通」な作品もきちんと載っています。私にとってはこの「普通」なフェアリーのほうが好みなのです。
フェアリーに精通している方も、そうでもない方でも、ひとまずはページを開いてみてはいかがでしょうか。

そんなわけで、難しくないところを強調しながら今月号について書いていきます。

■WFP作品展
 フェアリーの新作が並びます。担当はあの神無七郎さん。奇々怪々なルールの作品群でも一作一作丁寧で的確な解説をしてくださいます(いつも変なルールばっか投稿してすいません…汗)。読者だけでなく、作者側としてもとてもありがたいものだと感じています。

○出題
 今月の出題作のうち3作は私です。そしてそのうち一題は5手ばか詰です!(WFP作品展 78-10)きっとこれなら手がつけやすいはず…!
 周囲の反応からも手応えを感じた一作でもありますので、是非たくさんの方々にチャレンジしていただけたらと思います。
 あ、残りの二題もよろしくお願いしますm(_ _)m

○結果稿
 自作は透明駒です。易しいですが。

■フェアリー版くるくる展示室
 不定期ですが最近は毎月開催されているように思います。本家よろしく易しめの趣向作が並んでいる(はず)なので、難しいルールはちょっと…という方でもきっと解ける(はず)!

■Fairy of the Forest
 ばか詰オンリーの発表先です。(きっと)新規参入者を切望していらっしゃるはず。次回投稿作の募集中のようですよ!

■推理将棋
 門外漢です(すいません)。人口が多い分野だと思いますので、推理将棋ファンとフェアリストとの間でよりいっそう人の行き来があればいいですね。

■フェアリー入門
 各ルールの入門作を募集していらっしゃいます。今回の課題は強欲と禁欲。比較的理解しやすいルールなので、初めての創作はここからはじめてみるのもいいかもしれません。

■読み物
 上記の「フェアリー入門」にかこつけて、誰かさんが強欲禁欲の対抗系ルールの習作などを見せびらかしています。読んで。

■ブログ紹介
 本ブログが紹介されています!ありがとうございます!

○総評
 今月は自分の露出が多い。



 初めてのルールなんて解けない…。と思っている皆さん!大丈夫、私も解けません!解けなくても、まず最初は作品たちを鑑賞するだけでも、十分作品の面白さを理解できると思います。その上でより一層の理解を追求したい、解けるようになりたいときはどうすればいいのでしょうか?
この際、いっそつくってみるのもいいでしょう。そのルールを知るのに大いに役立つ経験となるはずです。
 特に今月は投稿募集先も多いので、良かったらチャレンジしてみませんか?


 さて、その募集要項はどこに載っているんでしょうか?
 
 
 もちろん、Web Fairy Paradiseです。
 ここ → http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/WFP89.pdf
2015/11/19

5手ばか詰を考えよう(4)

■飛で詰める
飛の詰め上がりはやはりこれです。

2015-11-12d.jpg

この図で26飛を34馬と変えてもよくある詰め上がりとなります。

飛車は有り体に言えば最強の駒なのだから、この詰め上がりもさぞかし多いだろうと思われることでしょう。しかし実際はそれほど多くはありません。理由に全く心当たりがないわけではないですが、また長くなりそうなのと、そんな重要なことでもなさそうなので省略します。

頻度を考えてみると、体感的には
金、馬、龍>>>>>飛>>>>>>>その他

ぐらいでしょうか(客観性はまるでない)

全体から見て少ないとはいえ、成駒以外の駒としては金に次ぐ重要性がある…。それぐらいの立ち位置を占めていると思っていただければと思います。

そして作例も比較的少なく、あんまりいい例が思いつかなかったので自作でお茶を濁すことにします。

ばか詰 5手 (未発表)

2015-11-18a.jpg


■銀で詰める
○頭銀
 ばか詰 3手
2015-11-19a.jpg

25銀 15玉 16銀打 まで3手

 頭金と比較しての作図上のデメリットは、死角である銀の腹を埋めるため△26歩のような配置を置かねばならないことです。しかしこのデメリットはメリットと表裏一体です。

 銀に死角があるということは、例えば26歩だけ置いてしまえば15玉地点では詰むがその他の地点では詰みにくい状況をつくることができます。前回の記事の頭金の余詰の例と比較していただければよく分かると思いますが、要するに作者の「この地点で詰ませたい(余詰の危険性をなくしたい)」要望がある程度通ることになります。私としても、作図上困難を伴いそうな狙いの作品のフィニッシュとして頭銀は有力なのではないかと思いたまに採用しています。

ばか詰 5手 (Fairy of the Forest#44)

2015-11-18b.jpg


同じ手筋ですが、目的が違う作例としてはこちら。

ばか詰 5手 (未発表)

2015-11-18c.jpg

狙いには前例が多数あり投稿を躊躇ってしまいました。
ただこの駒数での表現はそれなりにコンパクト…?


未発表作を含め、何かしらの形ではまとめたいとは思っております。

解答はそのうち。
また今回の記事では未発表作も多く、どの程度の評価をいただけるのか分からないものですから、コメントいただけるととても嬉しいです。
2015/11/18

5手ばか詰を考えよう(3)

■トドメは金(追記)
 
 ここまでのポイントを改めて確認してみましょう。
1,頭金、腹金、尻金
2,支え駒としての角
3,モデルメイト

 これらのポイントを踏まえた上で、とり研でも話題となったくるぼん氏作の5手詰を振り返ってみます。
6MA.png

43銀 44玉 34銀成 45玉 44金 まで 5手

 どうです?全ての項目に見事当てはまっていると思いませんか?
 
 しかし慎重な方ならば「本作を知っていた上でポイントをでっち上げたんだろ」と勘ぐりたくなると思います。もっともな疑問です。私としても、それに言い返せるような証拠は持ち合わせておりません笑
 もう、騙されたと思って信じてやってくださいm(_ _)m

 さてこれまでの知識をもとに改めてくるぼん氏の作品を眺めてみると、納得のいかないことがあります。


 なぜこの戦力で余詰が無いのか、です。

 1)頭金の詰め上がりを思い出してください。
2015-11-12a.jpg

 銀と金を組みあわせるだけならば3手で可能ですので、5手ばか詰において銀と金を同時に持駒にするのは余詰リスクが高いはずですが…?
 この疑問から、配置の妙が見えてきます。

 仮にくるぼん氏作の56龍配置を56ととした場合、こんな余詰が一例としてあります。
 64馬 43玉 34銀 44玉 45金 まで 5手
 43銀 63玉 73馬 53玉 54金 まで 5手


 56と配置をさらに56歩と弱体化させると、こんな余詰が出てきます。
 64馬 44玉 35銀 45玉 46金 まで 5手
 53金 44玉 35銀 45玉 46馬 まで 5手
 36馬 64玉 75銀 65玉 66金 まで 5手
 など

 各余詰を並べることにそれほどの意味は無いのでスルーしてもらって構いません。ただ大切なこととしては2つあって、
1,すべての余詰がものの見事に頭金(またはその応用)であること
2,そしてその上で詰め上がりの玉位置がそれぞれ異なっていること です。
 
 5手ばか詰にて、持駒に由来する余詰は無為無策ならばあらゆる場所で再現可能であるため、余詰防ぎの配置を増やせばならぬ危険性が非常に高いのです。これから創作しようと思っている方々ならば、このような余詰の特性を知っておいて損はありません。
 そして自身の利きを精一杯伸ばして、すべての余詰を防ぎきっている56龍配置。
 一騎当千の活躍を再発見できるのではないでしょうか。
 
 たかが余詰防ぎ、されど余詰防ぎです。どう余詰を防いだかが作品の完成度に与える影響はもちろんのこと、実は作意順にも間接的に関わっています。ばか詰では変化がないため、紛れに嵌まりでもしない限り作意順の全体像を瞬時に把握でき、その呆気なさは作意順の感動を薄めかねないからです。この性質は特に短編で顕著になりますね。
 その点本作は紙一重で余詰を防いでおり、その危ういバランスの下で、かつての余詰は深い良質な紛れに生まれかわります。詰みそうで詰まない絶妙な形を保って不利感のある作意順を成立させている本作は、5手ばか詰での一つの完成形といえるでしょう。

…どの層に向けての記事?
2015/11/15

大会で出題させていただいた

今日は大学のすぐ近くで高文祭があったのでお手伝いに行ってきました。

前日は運動部の行事の関係で日が変わるまで飲んでおり、その直後での業務でした。仕事的にはまるで役立っていませんorz

詰将棋のブースを自由対局場のそばに設置してもらい、そこで適当に詰将棋を出題していました。別に懸賞出題というわけではなかったので、解いてもらう方と一緒になって大盤の駒を動かしていって…といった感じです。この自由さが良かったようで、気軽に取り組んでもらえたんじゃないかなと思います。
……さすがに出題したのは普通詰将棋ですよ笑

そんな中での一作。
6Og.png


表紙投稿作ですがもう少しで投稿から2年経過しますし、恐らく時効でしょう。紛れに限定合が結構あり、そこに嵌ってくれた方もいらっしゃって、リアルタイムの出題ならではのエンタメ性を感じることができました。
Y路は既発表作を披露していた様子。私はその頃交流対局に駆り出されていたので、彼の出題の様子は遠目で見ていたぐらいです(すいません)。

上の図の解答はそのうちコメント欄で。


またプロ棋士の方々とお話ししたり、サイン色紙をいただいたり、(最近まともな飯を食べていないので彩りのあるお弁当がとてもありがたかったり)ととても楽しい1日でした。スタッフの皆様、選手の皆様、ありがとうございました。


…寝よう。
2015/11/14

5手ばか詰を考えよう(2)

■トドメは金(後編)

↓再掲
(1)頭金
2015-11-12a.jpg

(2)腹金
2015-11-12c.jpg


(3)尻金
2015-11-12e.jpg

書き溜めていたデータが消えて激萎えなので本来より少なめの記述です(怒)


ここまで王手する駒に着目してきましたが、ここで玉を包囲する駒にも着目したいと思います。といっても一つだけです。

無題

以下のような角が配置されているばか詰が出題されていたとしましょう。角を動かす紛れもあるでしょうが、とりあえずは角が不動である手順を予想します。このとき、玉の詰め上がり位置として有力な地点はどこでしょう?

角の利きが多いところですね。0マスより1マス、1マスより2マスのほうが、作品としての完成度および詰めやすさの点からいっても有力です。

角で玉を包囲する利きが2マスである地点は、以下の2つに大別されます。

1)角に隣接した地点:27,36,38,47 
 →腹金や頭金ができそうな場所です。
2)角の利きが隣接する地点:45,54,56,63他多数

今回特に覚えてほしいのは2)のほうで、便宜上「かすめる角(仮)」とでも呼びましょうか(呼びたい方は「グレイズ角」とでも…)。

なぜ大切なのでしょう?

------------

さてもう一つだけ覚えていただきたい概念に「モデルメイト」があります。チェス用語として「すべての駒が詰に必要となっている」みたいな意味らしいです。

こんな詰め上がりがあったとします。
2015-11-12f.jpg

馬でズバッと。3枚の攻駒すべてが詰め上がりに必要なのですから、モデルメイトであるように思われます。

しかし、恐らくですが詰キストに共有の感覚として、この図にはある種の気持ち悪さが感じられるのではないでしょうか。X地点を埋めるための、せっかくの馬の長い足はこの場合別に必要とされていないからです。できることなら香は歩にしたくはありませんか?

攻駒の利きに過不足のない詰め上がりであること、もちろん伝統詰将棋でも大切でしょうが、フェアリーではより重要なポイントとなるように感じています。理由は簡単で、この性質の持つ詰め上がりが、フェアリーでは本当に多いのです※1
現に冒頭に挙げた金の詰め上がりたちもすべてこの「過不足のなさ」という条件を満たしているのはお分かりいただけるかと思います。そこで今回は、こんな詰め上がりを「積極的モデルメイト(仮)」と名付けてみましょう※2
本当ネーミングセンス無いもんですいません汗


そんな詰め上がりたちの頻出の型を一通り把握することは、解図上でも作図上でもとても役立つことでしょう。

そしてその詰め上がりの構築資材として、「かすめる角」が頻用されます。金による詰め上がりでも、(2)、(3)で使用されています。また今後述べるのですが、龍、馬によるの詰め上がりでもよく出てきます。だからこそこの角を重要性をまず確認していただけきたかったのです。今後の記事でも、支え駒としての角の使い方には注目しておいてください。

前置きが長くなりました。ではこれまで述べたポイントも参考にしつつ、5手ばか詰の作品に取り組んでいきましょう。

○桝田隆行作 (詰将棋パラダイス/1989年9月)
2015-11-14te.jpg


○佐々木寛次郎作 (詰将棋パラダイス/2015年4月)
2015-11-14b.jpg


○たくぼん作 (詰将棋パラダイス/2006年12月)
2015-11-14a.jpg

(敬称略)


最後は応用編です。金は金でも…?

解答と私なりの感想はそのうちコメント欄に載せます。


※1
私なりにフェアリーで積極的モデルメイトが多い理由を考えてみました。このあたりはどうしても普通詰将棋との比較になってしまうのですが…。
短編ばか詰では変化がありません。手数も余詰との兼ね合いで5~7手が関の山です。要するに重厚さに欠けるのです。ですので別のセールスポイントが必要になってくるわけで、そこで白羽の矢が立つのがフェアリー特有の「虫の良さ」となるのではないかと思います。その「虫の良さの演出」の評価項目中には、当然詰め上がりも含まれているでしょうというのが私の推測です。
逆に言えば、普通詰将棋にて積極的モデルメイトが必須かと言えば、私はフェアリーほどではないと捉えています。普通詰将棋では手数も変化も重厚さも多種多様なように、何をセールスポイントにするかは作品ごとの話であって、詰め上がりはどの作品でも重要であることは承知しておりますが、どれほど重要かどうかは作品が決めることだと思っているからです。

※2
単純に「モデルメイト」と言うだけでも、積極的モデルメイトの意味になっているのかもしれません。このあたりには詳しくないもので、言葉を誤用していたらごめんなさい。
2015/11/13

5手ばか詰を考えよう(1)


・5手ばか詰を考えよう【基本の詰め上がり】
 (1)金〔前編〕
 (2)金〔後編〕
 (3)金〔追記〕
 (4)飛、銀
 (5)角、桂
 (6)龍
 (7)馬

 (8)まとめ



金で詰ませる(前)

5手ばか詰を始めてみましょう。

まずルールから。

【ばか詰(協力詰)】先後協力して最短手数で、受方の玉を詰める
http://k7ro.sakura.ne.jp/rule.htmlより。
 
 5手ばか詰なら、互いに協力して5手以内で詰む手順が1通りならば完全作となります。つまりあらゆる非限定を拒絶します。成生非限定さえダメです。
また7手以上、一般的に言えば指定手数以上で詰む順がいくつもあったとしても余詰ではありませんし、7手で詰む順を答えても不正解となります(5手で詰むものを7手以上で詰ませることは、互いに協力できる環境ならば意図的な迂回を使うなどして、ほとんどの場合で可能ですよね)。
また、透かし詰めは不可です。以上3点だけご確認ください。



玉を詰ませる上で最も大切となる駒の1つに金があります。5手ばか詰でも金で詰ませる作品は数多く存在しています。まずは基本に立ち返って、金での詰め上がりを確認してみましょう。

(1)頭金
2015-11-12a.jpg

(2)腹金
2015-11-12c.jpg
2015-11-12b.jpg

腹金ではないですが、上の図と関連してこの詰上がりも是非覚えてください。
2015-11-12d.jpg

(3)尻金
2015-11-12e.jpg

これらの詰め上がりは、支え駒が異なることもありますでしょうが本当に頻発します。
しかしなぜこんな基本的なところから始めなければならないのか。普通詰将棋と比較して考えてみましょう。
普通詰将棋でも、「トドメは金」という格言が示す通り、金をとどめに使うことの重要性はすでに高いレベルで共有されているはずです。といっても詰将棋ではそもそも自分が金を持っていなければ当然金を使うことはできません。しかしばか詰では相手は金を渡そうと思えばいつでも渡せます。そこが普通詰将棋とフェアリーの大きな違いであり、フェアリーでは自分が飛び道具さえ持っていれば金を獲得することは3手で可能です(品切れは例外です)。ですのでたとえ金を持っていなくとも常に金の入手を念頭にいれておかねばなりません。

例えば(2)で考えると、

ばか詰 5手
2015-11-13c.jpg

59香、58金、同香、45玉、35金 まで5手。

あっという間に最遠打、限定中合の完全作の完成です。簡単ですね。

次は完全作ではありません。
2015-11-13b.jpg

一例として 27飛(非限定)、26金、同飛、15玉、25金 まで。
        27飛、26飛、同飛、15玉、16飛打 まで。

玉の後ろから飛を打っても、同じ要領で詰みますね。
よって本図はおびただしい数の余詰があることになります。
この手順は玉位置が25でなくても、26でも27でも、28でも38でも端に近い玉ならばどこでも応用できますね。

本図で言いたいことは、どちらかといえばつくるときの問題であり、5手ばか詰で飛び道具(特に飛角)を使うとき、初形玉位置が盤端周辺2マス(下図の色付き部分)の場合、強力な余詰の危険に晒されているということです。
h.jpg


5手のうち3手を犠牲にしてまでも欲しい駒が金であり、金の強力な性能を示している結果とも言えるでしょう。


長くなってきたので一旦ここでストップ。次回は実際に金がトドメとなる作品を紹介してみます。