欲を出さないと面白い?

禁欲
12 /30 2015
 
 実家からの更新。

タイトルのココロは「指し手を制限することは面白さを制限することになるか?」です。
それに対する私の答えはもちろんNO。特に対抗系(相手が抵抗する)のルールでは、その制限を逆用するような抵抗が生じてなかなか面白いのではないかと考えています。その面白さを伝えられたらいいなと思い記事に着手した次第です。
 (果たして自作はその面白さを少しでも引き出せているのでしょうか…汗)


 そんなわけで今回のテーマは禁欲詰です。お互いに禁欲ルールが課せられた以外は普通の詰将棋と変わりありません。

〔禁欲〕駒を取らない手を優先する。

 よく似たルールに「取禁(駒取り一切禁止、ただ詰みの概念は普通と同じ)」がありますが、取禁に比べ禁欲は駒を取る手しか合法手が無いときは駒を取ってもいい点で異なります。逆に言えば、取禁ルールとの差別化を図るためにも、禁欲ルールでは駒取りに関わる点が焦点になることが多いとも言えます。

 まずは軽いものから。

 禁欲詰 9手 (WFP作品展73-1)
2015-12-24b.jpg


 金が動けるようになれば32金までですから、初手は33香としてみたいですよね。この手に対し逃げれば香成から簡単です。
 しかし33香に対しては32歩合ぐらいで困ります。

2015-12-24a.jpg

 同香成でも同金でも詰むのに、「22金」という駒を取らない手のほうを選ばざるを得なくなっているのです。以下41玉、31金、同玉でダメですね。

 23の金も攻めに参加してもらわないと詰まないだろうけど、下手に金を自由にしてしまうと、22金という選択肢が増えてしまう。アンビバレントな状況だったわけです。

 初手は34香と一つ控えて打ってみましょう。32歩合に対しては(22金の選択肢が無いので)同香成とできます。ここが33香との違い。
 では33歩合では…?これは23の金のピンが外れますので、32金までの詰みですね。このように、自分からアンピンを図るのではなく、相手にアンピンの如何を委ねるのが解決法で、後出しジャンケン的な表現が本作の狙いだったのでした。

 ここでは33金と逆王手して同香を強制するのが一番の延命策です。しかし攻方は単純に初手33香とするより金を得したことになります。以下はそれっぽい収束。

正解手順は

 34香 33金 同香生 32飛 22金 41玉 52金 同飛 31金 まで 9手詰となります。

 2手目の逆王手は飛車でもできますが、それだと5手目に合駒する飛車が尽きてしまいます。飛車温存のための金合なのでした。

 結果稿は http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/WFP86.pdf の 17pから。

 ところで、初手は34以遠ならばどこに打ってもいいのでしょうか?いえいえ、実は初手は34香以外は不詰なのです!35以遠に打ってしまうと金輪際詰みません!
 一体なぜ?その理屈はまた今度の話題にさせてください。というのも、その原理を主眼にした自作もありますので、それを取り上げるときに一緒に話せたらと思います。……こんな感じで来年につなげる形で締めましょうかね。鬼に笑われそう。

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 2015年ももうすぐ終わりですね。本ブログもこれが今年最後の更新です。

 私としては、今年は多くのことにチャレンジできた一年だったと感じています。そして多くの方に支えていただいた一年でもあります。ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
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ネット発表作

未分類
12 /28 2015
Andernach協力詰 7手
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【Andernach】
駒取りを行った駒(玉を除く)は、その場で相手の駒となる。
[補足]
1) 取ると二歩になる場合相手の駒にならない
2) 駒の向きの転換は成生の選択の後に行われ、成生の選択権は駒を取った側にある
3) 駒取りの場合に限り、8段目への桂の不成、9段目への桂香歩の不成が可能(二歩の例外を除く)

http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/wfpr2015.pdf より


↓以下答え




25歩 26歩 27龍 同歩生 28桂 同歩成転 17と まで 7手

 二歩禁を利用しました。
 香合と対比していただければわかりやすいのですが、28地点まで連れていってから転させたいので、27地点で転してもらっては困るわけです。
 Andernachなのに一旦は転を拒否すること。そして転の可否を歩の成生にそのまま対応させた対比 構造ができたので、一応は納得できる出来ではあります。
 余詰も防いでいる桂配置が影の功労者。

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CXKmSaXUQAAoeWh.jpg

〔強欲〕駒を取る手を優先する。
透明駒についてはWFPなどの記事をご覧ください。

↓以下答え





35飛 45飛 56金 まで3手詰

○詰め上がり図

2015-12-28a.jpg


 予想通りの頭金ではあるが、44地点が埋まっていないように見える。その上、2枚もある透明駒の受けは考慮しなくていいのだろうか?合駒はなぜ限定なの?よくわからないことだらけだ。

 疑問点を順を追ってほぐしていこう。

 ひとまず手順だ。ここにもおかしいことがある。
 強欲なのに、駒を取らないほうの手を選んでいるのだ。
 3手目は同飛とすべきであろう。それなのに、駒取りでない手が3手目として採用されている。

 この「おかしい手順」が、透明駒を判明させる鍵となる。

 この手順が成立するためには、3手目に35飛を動かせなかった何らかの理由がなければ道理が立たない。……つまり、35飛はピンされていたことになる。

〔考えられる局面の一例〕
2015-12-28b.jpg


 うん。これで一件落着。

 …いやいや、これでもおかしいぞ!
 作意順では2手目も駒取りじゃなかった。強欲ルールだったら、上みたいな図だったら2手目は合駒より「+35(同香)」を優先しなければならないじゃないか。

 あっ、じゃあこの香車もピンされてたわけね。


〔考えられる局面の一例〕
2015-12-28c.jpg

 はぁー、なるほどね。今度こそ一件落着。

 …いや、まだおかしい。
 作意順では初手も駒取りじゃない。この図だったら、初手は-X(33角成)という駒取り順のほうを優先する必要がある。この22の角さえもピンされていなければ、作意順を成立することができないようだ。しかし、それはこの構図では無理そうだ。


 少し考え方を整理する。ピンをする主体の駒を「縛り駒」とすると、

 縛り駒→縛り駒→縛り駒→35飛 となって、はじめて作意順が成立する。 

 そしてこのようなことが可能な構図は、(作者の想定している限りでは)以下の2つしかない。

○A図
2015-12-28d.jpg

○B図
2015-12-28e.jpg


(21香は飛でも良いし、角や飛の透明駒は成駒でも構わない)

※初手53飛では65玉を強制される

 なるほど、これで受方の透明駒が出払っていることが自明なわけだ。初手も限定。

 あとは44地点が埋まっているかどうか。詰める側としてはB図を棄却してA図に限定させたい。

 そこで2手目の限定合の意味が判明する。構成する素材(飛車)を不足させて、B図の可能性をなくしてやろうという目論みなのだった。A図は飛がなくとも香さえ残っていれば構築できる。

(この品切れの筋、手法としてめっちゃ便利なのでついつい使いすぎてしまいます。いけませんね)
 
 一見何気ない手順でしたが、3手のすべてが「駒取りではない」という重大なメッセージを発していたのですね。


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「Andernachやら透明駒やら、わけがわからん。先にルールの説明すべきやろ」というご批判は全くその通り。ちょっと手順前後してしまいました。そちらのほうはもう少々お待ちください。

2015年 記事一覧

未分類
12 /23 2015
記事が増えてきたので、ブログ記事一覧を別につくってみました。
逐一更新していこうと思いますので、ご活用ください。

本ページはブログトップ左のURLから飛べるようになっています。

○5手ばか詰シリーズ
・詰め上がりの分類
 (1)金〔前編〕
 (2)金〔後編〕
 (3)金〔追記〕
 (4)飛、銀
 (5)角、桂
 (6)龍
 (7)馬

 (8)まとめ

○感想
・WFP
 2015年11月号
 2015年12月号

・詰パラ
 2015年12月号

○フェアリー単発記事
 二歩禁(1)
 二歩禁(2)
 ツイン
 ネット発表作
 欲を出さないと面白い?

○普通詰将棋単発記事
 自作:スマホ詰パラ No.4341 
 去年の短コン

○イベント?
 とり研
 イベントで出題した


twitter → @ueeeee22
 更新情報がすぐ確認できるのでオススメです。お願いだからフォローして!


・自己紹介
 大阪生まれだがすぐ某砂漠県に引っ越した。小中高大とラクダに乗って通学している。
 フェアリーではネット発表が多い。詰パラなら50作ほど。
 初めて取り組んだルールはアンチキルケ。ネットフェアリー界で育ちました。
 駒取りに関わるタイプのルールが好きです。
 普通詰将棋では、詰パラもスマホ詰パラもともに入選10回ぐらい。見た目のいい詰将棋が好きです。
 フェアリー、普通詰将棋どちらもまだまだ経験が浅い身ですので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。



 
 
 

Web Fairy Paradise 90号

感想
12 /22 2015
 寒い日が続きます。皆様いかがお過ごしでしょうか。私はこたつに入りながら透明駒に悪戦苦闘しております。まーうまくいかないこといかないこと。頭がパンクしそうです。
そんなこんなで今月も20日を迎えました(今年もあと少しですね)。Web Fairy Paradise最新号が発刊されています。

 → http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/WFP90.pdf

 
 ざっと目を通しました。

○WFP作品展 出題
 今月は新規出題はありませんが、先月の出題が再掲されています。自作は比較的やさしいはずですので、初めての方の解図のきっかけになればと思います(透かし詰めの概念で若干の混乱があるかもしれません)。初めての方も、そうでない方も解答よろしくお願い致します。

○WFP作品展結果稿
 フェアリー駒の種は尽きませんね。私などは頭が固くて手順を追うのがやっとです…。

○ちょっと早い年賀詰作品展
 2作とも強欲ルールです。お、このルールなら自分も解けるかも!
 いやでも、フェアリーで初形象形をつくるのは難しいですよ。それでもきちんと象形で年賀詰を用意してくださる両氏に感謝ですね。

○推理将棋 結果稿
 手順を眺めただけの門外漢の感想に過ぎませんが、95-2が好みですね。一条件で11手すべてが限定されているのを目の当たりにしてしまうと、もう笑うしかありません。実際に解答した方々ならば尚更でしょう。
 
 印象としては一条件で手順のすべてが決まる作品は珍しいように思います。他にも一条件の好作がありましたら、是非教えてください(解けませんが…)。

○フェアリー入門
 強欲と禁欲ルールでしかも全作5手以内。これは解く一手です。

 つくる側としては、5手以内で簡単に解けてその上で面白い、理想的な啓蒙作を目標としていましたが…。うーん、難しかったです。例の52角成の3手詰のように、ずっと引用されるような啓蒙作が私の理想です。一度はものにしてみたいものですねえ

○フェアリー版くるくる展示室
 本家くるくるでも大活躍のやよい氏がフェアリーでも登場。
 WFPのほうもどんどん盛り上げていただければ嬉しいですね。

○作品募集
・フェアリー入門
 今度はQ(クイーン)。5手以内でも十分派手なアクションを期待できそうです。

・フェアリー版くるくる展示室
 ばか自殺詰のほうは、どこまで手数が伸びるのでしょうか。

・WFP作品展
・Fairy of the forest
 課題は「龍または攻方王が活躍する協力詰」。



 それでは、良いフェアリーライフを。

 WFP既刊号の一覧は http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/wfp.html

5手ばか詰を考えよう(8) ミニ作品集 

未分類
12 /18 2015
○「5手ばか詰を考えよう」 詰め上がりの分類 記事一覧
 (1)金〔前編〕
 (2)金〔後編〕
 (3)金〔追記〕
 (4)飛、銀
 (5)角、桂
 (6)龍
 (7)馬
  
 あらためて見ると香と歩がありません。少ないからしょうがないね。


 以上の記事で一通り詰め上がりを列挙できました。まだ見ていない記事がありましたら、振り返ってみていただければと思います。

 前回の記事でもほんの少し書きましたが、このように詰め上がりを列挙する意義について少し触れさせてください。

 ばか詰において詰め上がりを体系的に把握しておくことは、特に創作時においてはとても重要となるものだと思います。作意順で使うにしろ、使わないにしろ、必ず遭遇する筋たちです。仲良く付き合っていきたいですね。 

 普通詰将棋と比較して、ばか詰での余詰筋は抑えることが難しいものです。飛、角、香などの飛び道具さえあれば、合駒をむしることで大半の詰み筋は再現可能ですからね。作意順にそれらの詰め上がりを採用せずとも、否が応でも出会ってしまうのです。
 
 そして以上のことは純粋なばか詰でなくとも、「○○ばか詰」というようにばか詰と他のルールを組み合わせた場合でも同じです。たかが5手ばか詰と侮るなかれ。ばか詰はすべてのフェアリールールの基本。まずはここから始めて、フェアリーの世界を広げていこう!

 ではさっそくこれまで学んだことを活かして5手ばか詰を解いてみましょう。「解けない!」という方は、とりあえず答えだけでも見ていってね。

 とりあえず5作並べてみました。埋め合わせで自作も紛れ込ませています笑
 形も手順もシンプルで、そしてその上でちょっと考えるところがあるようなものを選んでみました。果たしてこれまでの知識が活かせるか、チャレンジですね。タイムアタックも良し。じっくり鑑賞も良し。答えはまた後日コメント欄に載せますので、それまで少々お待ちください(すいません)。

(すべてばか5手詰 敬称略)

1,小林看空 (Web Fairy Paradise/2013年5月)
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2,佐々木寛次郎 (詰将棋パラダイス/2007年2月)
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3,桝田隆行 (詰将棋パラダイス 1992年4月)
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4,上谷直希  (詰将棋パラダイス/2010年8月)
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5,神無三郎 (詰将棋パラダイス/1987年10月)

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単純に紛れの数だけで言えば3が一番難しいことになりますが、盲点にハマるかどうかで難易度は人それぞれ変わってきそうです。自分は2で悩みました。

5手ばか詰を考えよう(7)

5手ばか詰
12 /13 2015
■馬での詰め上がり

 馬らしい詰め上がりとしてはやはりこれでしょう。

2015-12-13b.jpg


 生の飛車との相性の良さが一目瞭然ですね。
 この詰め上がりを目指す場合、龍より飛のほうが使いやすい逆転現象が起こることになります。ばか詰ならではの不成、その意味付けでは「詰みやすい地点に誘導する」というものが一つの代表的な例になることは有名でしょう。その一つの例として以下の作品を挙げてみました。

ばか詰 5手

神無三郎氏作 (詰パラ 1988/3)


2015-12-13a.jpg

↓解答(白抜き)

92角打 45玉 43飛 54玉 65角成 まで 5手
 
 飛車をまわすための遠打。シンプルな意味付けながらも、簡素で初形で表現したからこそ映えてくる初手です。その上で飛不成もでてくるのが嬉しい相乗効果。全体的に裏をかくような攻め方が印象的です。

 ばか詰での不成は、普通詰将棋での不成とは全く異なる意味付けであることが大半ですので、それに関してもまた1つの記事として記していくつもりです。

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 ナナメに伸びる利きだけが馬の強みではありません。ご存知の通り、馬は周辺8マスに一切の死角を持ちません。強化版金として用いることが頻度として最も多いように思います。

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 頭金、腹金、尻金ならぬ頭馬、腹馬、尻馬…。バリエーションはいくらでも考えるでしょうね。
ばか詰において、金での詰め上がりが有力であることは該当記事で述べた通りです。金が有力ならば、金を馬で置き換えた詰め上がりも有力であることになります。金より死角が少ないですから尚更ですね。両者極めて頻発の詰め上がりですから、是非覚えておいていただければと思います。


 以上が詰め上がりでの分類でした。最後のほうは冗長になってしまっていたかもしれませんがご容赦ください。
 ばか詰において詰め上がりを体系的に把握しておくことは、特に創作時においてはとても重要となるものだと思います。作意順で使うにしろ、使わないにしろ、必ず遭遇する筋たちです。仲良く付き合っていきたいですね。

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 ここで記事を終わるといかにも寂しい。そんなわけでもう少し話を続けましょう。

 生角と馬を比較して、角はトドメを刺す性能としてとても頼りないことはなんとなくご理解いただけけるのではないでしょうか(角での詰め上がりの記事と比較するのが分かりやすいかも)。

 盤上に攻方の馬があったとして、それをトドメとして使うか支え駒として使うかは、どちらも有力ですから分かりません。しかし、生角(あるいは持駒の角)に関してはある程度用途を推測することができます。

 成って使うならトドメの駒、生のまま使うならば支え駒です。
 例外的に生角がトドメとなるのは持駒の角を打ったときが大半でしょうか。その登場局面はかなり限られたもののように感じます。

 この法則は5手という手数制限から生じる、自然発生的なものだと思います。一作者の経験則に過ぎませんが、結構使えますよ。


ばか詰 5手 (2解) 
小林看空氏作 (詰パラ 2015/8)


2015-12-13c.jpg

↓解(白抜き)
13角、47玉、39桂、36玉、35角引成 まで5手
64角、45玉、57桂、54玉、53角右成 まで5手

盤上の角と持駒の角が、それぞれの解でトドメ/支え駒と役割交代しているのが対照的。
複数解として、両者を比較できるポイントが随所にあり好感が持てます。


ばか詰 5手
神無太郎氏作(AWAKEN 36 詰パラ 1995/2 再掲)

http://2nd.geocities.jp/cavesfairy2/awaken/index.htm

6TU.png

↓解(白抜き)
 
28馬、37桂、56飛、47玉、38馬 まで 5手

前に利かない駒を探す。無駄のない仕上がりです。


二歩禁(2)

フェアリー
12 /08 2015
  二歩禁(1) 
  ツイン


↑を先に読むといいかもしれません。

■二歩禁(2)

 1つの決定版を紹介いたします。

 とはいえ作者である占魚亭さんのブログからの引用ばかりになってしまいました。

【背面】 ある駒Aの直後に相手の駒Bがある時、AはBの動きになる。1段目の桂香歩、2段目の桂も行き所のない駒にはならない。
【ばか詰】 双方協力して最短手数で受方玉を詰める。透かし詰は詰みと認められない。
【利き二歩有効】 玉を取ると二歩になる手を王手とみなす。
【利き二歩無効】 玉を取ると二歩になる手は王手とみなさない。


20151202211353.jpg


以下答えを書いてしまっているのでご注意ください。









 (A)56歩、54玉、55歩、56桂、44歩、同玉、43歩生まで7手。

 まず(A)のほうからいきましょう。
(A)のほうは先打動歩詰としての王道の展開。当然ながら、初手から44歩、同玉、43歩としてしまっては打歩詰ですね。

 図1のように、トドメの歩を一旦盤面に控えておくのが深謀遠慮の戦略となります。
2015-12-07d.jpg


 (B)は出色の出来と言っていいでしょう。

 (B)56歩、44玉、64歩、54玉、55歩上、56角、44歩まで7手。

 4手目△54玉が利き二歩無効を活用した宙ぶらりんの応手。玉を詰みやすいところへ誘導します。

2015-12-07e.jpg

 以下は利き二歩無効を鮮やかに解消しての終局。視界が開けるような感覚です。
 
2015-12-07g.jpg

 誰しもが一度は考える、2枚龍での詰め上がり。こうも綺麗に決められては脱帽するしかありません。

あまりに端正な初形から、背面ルールを活かした充実の手順で、これを完成品と呼ばずして何を完成品と呼ぶのか!素晴らしい作品だと思います。

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 さてここからツインの話になります。

 本局の出題法は明らかにツインを意識したものです。さて問題の2種の解について比較してみると、それぞれ全く別物で、手順そのものに比較する場所はないように思われます。
 では本作はツインとして失敗作で、どちらか一方、例えば(B)だけで出題したほうが良いのでしょうか?

…確かに少しはその方向性も考えましたが、やはりツインでの出題のほうに軍配が上がるかな、と判断しました。
 何故か。

 今回は利き二歩有効/無効の判定によってそれぞれの唯一解性、独立性が確立されています。要するに(A)の条件が(B)の手順を制限し、(B)の条件が(A)の手順を制限しているから、両者は唯一解となっているのです。ここに私は両者の関連性と対称性を感じました。

 図再掲

(A)〔利き二歩有効〕の途中図
2015-12-07d.jpg

 作意はここから44歩と王手しますが、これは(B)の条件下では王手になっていません。よって(B)ではこの手順を再現できないことになります。

(B)〔利き二歩無効〕のほうはわかりやすいです。
2015-12-07e.jpg

 この図での54玉は、(A)の条件下では合法手でないことは明らかです。やはり(A)ではこの順を再現できません。



 ただ私は非常にひねくれています。物凄くいやらしく考えると、
 
 ルールが違うんだから手順が違うのは当たり前じゃないか
→ルールも違い、また手順にも関連の見いだせないものを並べてツインと呼べるのか?

 とも言えるかもしれません。実際少し考えました 確かに今回、両者ともルールが違います。ただ、ただこのルールの違いは背面ルール全体で言えばごくごく僅かな差であるはずです。
 世にあふれる背面ルールの作品は、利き二歩の解釈どちらを採用しようとと、手順に何ら関係のない作品が99%を占めます(当社比)。つまり両者はほぼ一緒の条件と言えるのです。その上、図面自体は全く同じですし。違うのは二歩の扱いだけ。
 
 そんな枝葉末節のような一行のルールが、全く同一の局面である(A)と(B)の間で相互の抑制関係を成立させている。

 冷静に考えると、これはかなりスゴイことだ。同じだからこそ浮き彫りになる違い、まさしくツインの醍醐味そのものじゃありませんか。詰将棋の自然美がここにはあるように感じられます。だから本作は、ツインでいい!ツインがいい!

ツイン

フェアリー
12 /07 2015

 次の記事に入る前に、ツインあるいは複数解の概念を考えていきましょう。

 この記事を書くために事前にいいページが無いかネットサーフィンしてみたのですが、意外と体系的にまとめているページがないもので困りました。ツインとは要するに、似たような局面図で2つの解を求めてもらう方式のことを言います。複数回ならば文字通り同一の局面で複数の解を求めてもらいます(間違ってたらごめんなさい)。
 その出題法に対しては、「単純に詰将棋を2題出題するのとどう違うのか」という疑問が当然生じます。
 作品をツインで出したからには、単純に別々のものとして2題出題する以上の効果を求めていかねばなりません。そうでなくては、ツインで出題した甲斐が無いのです。フェアリストは毎回毎回変なルールをこねくり回して解答者を混乱させる存在です。その解答者の苦労に報いるためにも、その作品ではそのルールを使わねばならなかったと納得させるだけの手順を用意するべきだと思っています。

 では果たしてツインという出題法では、どんな演出効果を期待できるのでしょうか。
 TTT02(課題 複数解またはツイン)の選評のなかで、ジャッジの高坂さんはこう仰っています。

(一部引用)


 複数解(あるいはツイン)というのはチェスプロブレムの世界から拝借したテーマだ。特にヘルプメイトでは既にそれが標準設定となっており、複数解(或いはツイン)でない作品を探すのが難しいくらいである。
 では、彼らがそれほどまでにこの構成法にこだわるのは何故か? それは一言で言うと、単解では表現不可能な解同士の有機的な関連性を表現できるからだ。キーワードは「対照性と統一性」。


 「有機的な関連性」、「対称性と統一性」。以上の2点。ここです。要するに2解の双方を比較したいし、対立させたいのです。そのためにはその2解が散漫に独立してもらっていては困るし、完全に同一でも困る。
 同じ上で、違う。そんな表現をしたい手法というわけですね。

 以上の点を踏まえた上で、どんなツインが悪くて、どんなツインが良いのか、「比較」していきましょう。

○悪い例    辛辣だ
 当時中学生。本当の本当に駆け出しの頃の自作です。いやー、清々しいくらい無知です汗

 Web Fairy Paradise/2009年3月

 協力詰 5手(2解)


2015-12-07b.jpg

A)42角成 35玉 26龍 34玉 24龍 まで 5手
B)59角 66角 同龍 47玉 36角 まで 5手

 (A)の手順と(B)の手順になんら関連性が見当たりません。強いて挙げるとすれば、角が上に行くか下にいくかにほんの少し対比効果があるかも…ぐらいでしょうか(それさえ無かったら、いくら駆け出しとはいってもさすがに投稿してなかった……はず……)。しかしそれ以降の展開は全く別々のもので、これでは「普通のばか詰を2題解いただけ」と言ってもらえたならばまだいいほうで、「2解のうち片方は余詰で、余詰消し置くの嫌だったんでしょう?」と言われても仕様がありません。
 まぁ、こんなのでも一応は自分の通ってきた道なんで、目を背けては可哀想ですね。背けたいですけど…。

 ※確か、かつてTTT02にも不出来な代物を出してしまったような気がします。これも目を背けたい。

 ○良い例

 山田康平氏作 (詰将棋パラダイス/2003年3月) うるてぃめいと No.198

 詰将棋 5手 (ばか詰じゃないです!)

2015-12-07a.jpg

A)上図
B)持駒桂 → 騎(Knight。八方桂)

 (A)47桂 同龍 57馬 同龍 45馬 まで 5手


 (A)はどこにもフェアリー要素がない正真正銘の普通詰将棋です。上の手順をよく覚えておいてください。

 さて(B)図。局面がそのままで、持駒が桂から騎(ナイト)に変わっただけです。
ナイトはフェアリー駒のなかでは比較的メジャーで、将棋の感覚からそれほど逸脱した奇想天外の利きでもないように思います。

kn (1)

http://www.abz.jp/~k7ro/rule.htmlより

 この八方桂の利きが示す通り、騎は性能としては桂の完全上位互換と言えます。

 出題図に戻りましょう。騎は桂の完全上位互換なのですから、桂馬にできた(A)の手順を騎でできないはずがないと思いませんか?
 ところができないのです。
 
 (B)47騎 同龍 57馬の瞬間に同龍ではなく46騎!の逆王手がかかってしまいます。桂ではこの逆王手は起きませんね。
相手の手に渡るのが桂か騎か、この違いで両者の立場の逆転が起こっているのです。
 いや~面白い。

 よって(B)では(A)の手順で詰めることができず、桂ではできず騎ではできる代わりの手順を別に探すことになります。

 (B)17馬、同香成、14騎、同銀、24馬 まで5手詰

 (A)では左に、(B)では右に飛ぶ馬がいい感じです。

 完全上位互換/下位互換という関係性は、必然的に「有機的な関連性」を想起させます。そして逆王手の発生の如何で鮮やかにその両者は区別されます。しかも、下位互換のほうが優位になる形で。

 (A)の条件では(B)の手順ができず、(B)の条件では(A)の手順ができない。「対照性」の1つの表現法と言えるでしょう。
 そして(A)(B)それぞれが唯一解になる排反のプロセスに関しては、「少なくとも類似局面での比較対照実験としてはロジックが関わっており偶然の産物ではない」ことが示されています。この事実がツイン作全体としての「統一性」の説得力をより強めるため働いてくれることに疑いは無いでしょう。

二歩禁

フェアリー
12 /04 2015
フェアリーでの話です。
あっ、ページ閉じないで!

■受方の二歩禁

書きかけのブログさんの記事のなかにこんな記述があります。


ところでフェアリーの一部ルールなら歩を打たずに(移動させて)二歩を発生させることができるはずだが、それは禁手扱いされているのだろうか。


結論から言えば、禁手扱いされていると言っていいと思います。
実例を見てみるのが早いですね。


Sub氏作 (詰将棋パラダイス/2011年4月)
安南詰 9手

2015-12-01b.jpg

【安南】味方の駒が縦に並ぶと、上の駒の利きは下の駒の利きになる。
安南ルールが付加された普通の詰将棋と思っていただければOKです。

12金 同玉 22金 13玉 12金打 同香 24金 同歩 23金 まで 9手

4手目に同玉とできそうですが、玉が香車の利きになっているため13玉と前に逃げるしかありません。安南では玉を弱い駒の上に乗せるのが王道中の王道になります。詰め上がり候補筆頭です。

6手目同香の局面(図1)
2015-12-01a.jpg

めでたく玉が香の利きになり身動きがとれなくなりました。23金で詰みですね?

……残念。ここでは14歩が玉の利きになってしまっているので、23金に対しては同歩!の受けがあるのです。これは気付きにくいですね。

図1からの正解は24金、同歩の2手を挿入してからの23金 までの9手詰になります。

先ほどと違う点は、敢えて2筋の歩を取らずに盤面に残したところです。
最終手の23金に対して同歩の応手は依然残っているように思われますが、2筋に歩が残っているために「同歩」の一手が二歩禁ルールに違反する反則手になっているのです!(同様の理由で、図1での24金に対して同歩寄とはできません)

適当な応手が尽き、よって詰みとなります。
取れる駒を敢えて取らない「取らずの手筋」をフェアリーに応用していくなかで、1つの成功例と言えるでしょう。

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■攻方の二歩禁

安南についてもう少し踏み込んでいきましょう。
安南ばか詰の入門として、以下のホームページがあります。とてもわかりやすく説明されているのでオススメです(私もこのページで安南ルールを学びました)。

安南ばか詰入門 → http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/annan1.html

以下少し長いですが記事の一部を引用させていただきます。


 次の図を見て下さい。(OFMより)
20061216151254.gif

 2五歩は下の2六金の利きになっていますので、1四玉への王手になっているようにみえます。
 だけど玉を取った時に1四歩となるのですが、1二歩が存在していて二歩ですね。
 はたして2五歩は玉を取ることが出来るのか?また別の言い方をすれば王手なのか?
 実にややこしい問題です。

 解釈は2つ、

 1つは王手はかかっていると見て、2五歩は1四玉を取ることが出来る。OFMでは「利き二歩有効」と言う言葉で説明されています。
 つまりこの図が詰上りということになります。

 もう一つが、1二歩がある為、1四歩とはいけない。よって玉を取ることは出来ないし、王手はかかっていない。
 OFMでは「利き二歩無効」と言う言葉で説明されています。この場合はこの図より1一歩成とした図が詰上りということになります。

 ややこしいと言ったのは、この二つの解釈がフェアリー界で現在統一されていないということ。

 王手がかかっていると見る解釈 : OFM、FM(通常)
 王手はかかていないと見る解釈 : 詰パラフェアリーランド

 と現在はなっているようです。どちらかに統一されればと思います。



「利き二歩」という言葉が出てきました。要するに「そこへ動けば二歩となるような地点への(上の図で言えば25の)歩の利きは果たして有効なのか?無効なのか?」という議論があり、その解釈が二分している現状があるということになります。

 私はどういう立場かと言うと、解釈としては有効のほうがしっくりくるけど、作品としては利き二歩無効のほうが面白いものがつくれそうだから利き二歩無効を利用して創作している……といった立場です。

この二歩禁問題は何も安南に限った問題ではなく、歩の性能が変化しうるルール(メジャーどころでは安南/安北、対面/背面)すべてで起こり得るものです。

そしてつくる側としては、それを使って面白いことができるならば使ってやろう、とまあ単純に考えております。


さてここまで述べたところで今月号のフェアリーランド(つまり利き二歩無効の発表先)の結果稿を見ていきます。

詰パラ 2015/9 上谷直希作  背面ばか詰 7手

2015-12-03a.jpg


【背面】敵駒と背中合わせになったとき、互いに利きが入れ替わる。

初手75歩は必須。
龍の利きが歩になり、歩の利きが龍になる正真正銘の逆王手です。
さてその75歩に対して何かしら合駒することになります。65合に対してもし54歩としたならば玉の利きが歩になり、歩の利きが玉になるわけですから詰みになります。安南でもそうであったように、玉を弱い駒の利きにする筋は常に考慮しなければなりません。
ただいきなり54歩とするのは打歩詰の禁手。よってどこかから歩を動かす筋で54歩を達成するのが目下の目標となります。本作の狙いは先打「動」歩詰だったわけです(「突き歩」ではないのがフェアリーらしいですね)。

作意は二手目65桂合。限定合の理由はその後すぐ判明します。65桂に対しての56歩打に57桂不成が利き二歩無効を活かした大胆な一着。
2015-12-03c.jpg


上の図にて56の歩は桂の利きになり王手はかけておらず、75の歩(龍の利き)は確かに55地点に効いてはいるが、もし次に55歩として玉を取ったとしたら二歩になってしまう。この二歩となってしまうような利きを無効(王手と判定されない)とするのが「利き二歩無効」の立場というわけです。

以下は64歩と跳ねて二歩状態を解除してしまえば、75の歩の利きは一転して有効となります。そこで今度の合駒は65金(飛車はダメ)。54歩のスライドを成立させるための援護射撃ですね。

2015-12-03d.jpg

手順を振り返ると、
75歩、65桂、56歩、57桂不成、64歩、65金、54歩 までの7手詰 となります。

広義の先打動歩詰ですが、そこに二歩禁を絡めつつ、歩が途中で最終目的地以外の地点を経由するのが珍しいかもしれませんね。

詰パラ12月号 感想

普通詰将棋
12 /02 2015
今月は日曜を跨がずに来てくれました。田舎でも早く届いてくれるのは嬉しいですね。
自分ごときの感想にどれほどの意味があるのか分かりませんが、めげずに書いてみます。

○表紙
 今、乗りに乗っている作者。高度な構想を表現しながら手順の軽快さも忘れない、独自の領域に到達していらっしゃる印象です。

 詰将棋の最初の窓口として、ネットの存在は大きいですね。もちろんスマホも。


○短コン
 はい、全部解きました。解くのが苦手なもので、結構時間かかりました。あぁ~手こずったぁ~
 自作が載っていて一安心。比較的小さなスケールの手順です。案の定というか、部分的に衝突しちゃってるといえばしちゃってます。差別化をはかった点を評価していただければと祈っております。
 
 ㉖と㉝がすごくいい感じです。個人的オススメです。
 好みだけで言えば⑲や㊸もドンピシャなのですが、どのような評点になるのでしょうか。
 
 ⑥や㉔あたりは高い評点が期待できそうですね。

 衝突に関しては…、まぁ、結果稿を待ちましょう。
 
 50題一気に解き続けるとさすがに不感症気味になってしまいます。いけないいけない。そんななかで、良さ気な変化や逃れ順といった彩りがあると作品が見違える感じがしましたね。
 
 ところで出題順は何の順番でしょうか?私はやけくそで「投稿の早い順」に一票(自作そんなに早く投稿したっけなぁ?)。


○結果稿
 大9は、意味付けも構図もスマートで良いですね(解説を読むまで分からなかったorz)。わざわざ寄り道しないといけない仕組みを構築したことで、ロジックとしても作図上の障壁としても一つ壁を乗り越えた気がします。構想作をつくれない身としては感服しきりです。面白いですねぇ。評点もっと高くてもいいと思います。

 デパ③には感動しました。ここまで詰め込めるものですか!

○フェアリー
・神無一族の氾濫
 もちろんフェアリーの話題は見逃しません!と意気込んで記事を書き始めたつもりが、今月はなんとフェアリー駒特集!おお…難しそう。駒の動きを理解したとしても、その上でどういった手順で進めていけばいいのかが分かりにくいので苦手意識があります。なんてたって種類が多い上にどんどん新しいのが出てきますからね…。うーんこれは厳しい。

・結果稿
 自作はともに二歩禁がらみの問題です。なかでも⑤は好評だったようでありがたいことです。利き二歩無効やらなんやらについてはちょっと別記事でまとめてみましょうか。

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自称フェアリストです