2017/07/24

詰将棋全国大会、短編名作選について

 全部はとてもとても無理なのでかいつまんで書きます。
 なんか思い出したらまた記事上げます。

■名古屋到着(詰将棋関係ないので読み飛ばし推奨)
 土曜日の12時ぐらいに到着(香龍会は残念ながら今回はパス。鳥取からでは名古屋に午前中に到着できませんでした…)。ホテルに荷物を預け、とりあえずご飯…と思って名古屋駅周辺をブラブラしてみるも人多すぎて名物系のお店はどこも行列。

 よくわからないまま地下鉄に乗る。ちょっと離れたところまで出てひつまぶしでも食べるかと思ったがそこのお店も大行列。3連休だしね。

 うだるような暑さと空腹でフラフラしながら「あ~、もういいわ、コンビニでもなんでもいいから次みた店に入るわ」なんて気持ちで歩いていると目の前にステーキ屋さんが!ステーキ丼ランチ!いいじゃないか…。
 めちゃめちゃな暑さで好き好んで鉄板とご対面してステーキを食べる人は少ないのだろうか、人気店っぽいのにすぐ入れました。大汗かきながらステーキ丼かきこみました。こういうのでいいんだよこういうので。

 そしてさらに歩いてお目当ての三輪碁盤店さんに。
 突然の来訪なのに(しかも初来訪)店主さんには大変よくしてもらいました。色々な駒を拝見することができて眼福でした。
 最近の将棋人気や将棋界、詰将棋などなど、色々な話をしているとあっという間に時間が。「将来いい駒買えるようにも就活がんばります」と挨拶して失礼しました。お邪魔しました。

■前夜祭、短編名作選
 内容については色々なブログで紹介されているので省略。
 久保さんの講義については、スライドが上がっています→ くぼの詰将棋
kifファイルまでついてくるなんてなんて親切設計なんだ…(感涙)

追記:鈴川さん → my cube

 内容も面白く、また軽妙なトーク、プレゼン力も大変参考になりました。
 また私の隣の席は驫さんだったのですが、熱心に講義を聞いて、ノートをとっておられる姿が印象的でした。驫さんと親御さんとは前夜祭でも当日でも席が近くで、たくさんお話しできて楽しかったです。ありがとうございました。
 
 前夜祭会場では、「短編名作選」の販売も行われていました。

 詰将棋パラダイス通巻250号を記念して、詰将棋研究会のメンバーを中心に古今短編詰将棋名作選200局が選定されたのが1976年11月のこと。それに50局を追加して250局を収録した「古今短編詰将棋名作選」が1977年2月に発行された。それから40年がすぎ、角建逸さんを中心に、その続編を発行しようという企画が立ち上がり、短編名作選プロジェクトが発足した。

1976年1月号~2015年12月号までの40年間に発表された短編作品(17手以内)400局を40名の選者が解説、2017年7月16日に名古屋で行われる第33回詰将棋全国大会に合わせて発売される。


→ 詰将棋メモ「短編名作選プロジェクト」  より引用

 私も一部選題、解説を担当いたしました。
 詰将棋ファンはもちろんのこと、指将棋ファンにもオススメできる一冊だと思います。これは買いですよ。
 将棋部の後輩の分も含めて、何冊も持ち帰りました…!

 購入法は詰将棋パラダイス最新号参照。
 SNSの情報によると将棋会館やアカシヤ書店でも購入できるようですが、現時点でも購入可能かどうかは地方民ではわからず。

・前夜祭の後はお酒
 次の日は全国大会だけど、それはそれとして前日も飲みました。
 酒ですよやっぱり。
  
 居酒屋に行って、そのあとは有志でサイゼ○ヤに行きました。
 サイゼリヤでは特に中編色の濃いメンバーで、話が盛り上がりました。 

 もちろん短編名作選の話も。
 久保さん曰く、「やっぱり愛上夫さんはすげえ」とのこと。全くもって同感です。
 明日もあるので名残惜しくも午前2時ぐらいに解散。

■全国大会当日
 普段の会合参加記ではその日あったことを出来る限り書いているつもりですが、全国大会当日に関しては内容が多すぎて無理そうです。
 詰パラに掲載されるであろうレポートを待ちますか。

 ざっくりかいつまんで書きます。

・看寿賞表彰式
 全国大会では看寿賞受賞作品を解説した冊子が配布されるのですね。特に今年の冊子は私にとっての宝物になりそうです。

 短編賞なので一番最初に壇上に上がりました。緊張しました。
 立派な賞状をいただきまして大変幸せでした。もう人生今で終わっても十分じゃないか!?

 時間の関係で受賞者コメントはなく、インタビューがありました。コメントについてちゃんと突き詰めて考えていたわけではないので個人的にホッとしたのですが、「こんなこと話そうかなあ」ぐらいには考えていたことはあったので、せっかく考えたんだしここに書いときます。

『このたびは看寿賞をいただき、大変うれしく思います。厚く御礼申し上げます。今までの全国大会は都合が合わずなかなか顔を出すことができませんでしたが、今回こうして受賞者として全国大会に来ることができたこと、穴を開けずに済んだことは良かったです。
 今回の受賞作は7手詰で、後半5手が主題になっております。序の2手については選考記事でもご指摘があり、意見が別れるところだと思いますが、少なくとも今の私は「入れて良かったな」と思っております。理由について話しだすと長くなるので気になる方はまた個別に訊いてください笑
 最後に1つだけ。私にとってフェアリーの存在はやはり大きいものです。それは単にルールの違いだけの話ではなく、異なる価値観・人に出会えたことが大きいのだと思います。いろんな環境に飛び込むことができて、いろんな反響をもらうことができる。自分に幸運なところがあるとすれば、そこじゃないかなあと。
 最近はWeb Fairy Paradiseやスマホ詰パラなど、インターネット上での多彩な発表先が出てきて、またSNSでのコミュニケーションも活発化してきており、私のようになかなか会合に参加できない地方の詰キストの地理的な不利(そもそもそんなのあるのか?という疑問もあるが)もずいぶん緩和されたように思います。
 いろんな環境からいろんな刺激を受けて、今の自分があります。これからの詰将棋界も、いろんな環境・発表先がお互いにいい影響を与えあって、刺激的で面白い業界になっていくことを祈っております。ありがとうございました。』

 …多分本番だったらこんなにしゃべってないですね…。

・解答競争


 ネットでも話題になった詰将棋。
「香車まだ一枚残ってます」の解説には会場でも笑いがおきました。
 やられたー笑

●いただきもの
 あげきれないぐらい色々頂戴しました。
 本当にありがとうございました。
 しっかり今後に活かせるよう、作品でお返しできるようにがんばりたいと思います。

●懇親会

 たくさん話せました。
 さすがに全員と話すのは無理なんですけど、もう少し多くの方と話せたらと今は悔やんでおります。次回への課題ということで。

 特に、短編の名手のみなさんとお話ししたときはめちゃくちゃ緊張しましたが、大変幸せでした。有難い限りです。

・解散、その後
 懇親会は8時前ぐらいで終了。運営の皆様お疲れ様でした。ありがとうございました! 
 
 その後は恒例(らしい)の有志での二次会へ。
 その後3次会まで行くのですが、前日も飲んでいたためか1時くらいで眠気MAXに。ちょっと早めのお開きとなりました。いま振り返るともったいなかったかもしれません…。




●とり研について
 最後に宣伝を。
 全国大会で山路くんも言ってましたが、2月くらいにとり研最終回を行う予定です。
 詳細が決まり次第、このブログやツイッターなどで告知したいと思います(訳:現時点では全然何も決まってません)
 奮ってご参加ください。よろしくお願いします。
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2017/07/14

詰将棋鑑賞、超入門!(2)

各論その1:収束とは?

 詰将棋鑑賞入門、各論です。
 鑑賞は初めてだなあ、という方向け。
 
 前回は「型」を中心に話を進めていきました。
(再掲)
1,序奏
2,主題
3,終わりへ(=収束)

 前回の記事でこの「収束」なるものの重要性を強調しました。いったいこの言葉とは何を指しているのか?今回はここの話が中心です。

 よく収束とは駒を捨てることという説明がされることがあります。間違ってはいません。収束では駒を捨てて、捌いてナンボですから。ただ、それだけだと初めての方には分かりにくいかも。
 私としての定義はこんな感じです。
 

舞台に登場させた演者を遊ばせる(=活用できないまま、そのまま盤上に残骸として残す)ことなく、綺麗な形で舞台から引き下げていく、この風呂敷を畳んでいく過程のこと


 盤上で何かを表現しようとすれば、それを成立させるための舞台が必要です。それをきれいさっぱり片付ける最後の仕上げの過程が収束と捉えることができるでしょう。
 そして、風呂敷をたたむときに一番効率がよく、また味がいいのが捨駒であるから、よく使われる…。というような考え方はいかがでしょうか?




菊田裕司氏作 (近代将棋 平成5年7月号)
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※詰将棋を引用する場合は、作者名と出典を明記するのがマナーです。

32角成、13玉、35角、(イ)24飛、14銀、12玉、13歩、同桂、23馬、同飛、13角成、同飛、24桂、22玉、32香成まで15手詰

 非常に端正な初形。こんなに綺麗な初形にはそうそうお目にかかれません。
 もちろん形は綺麗でも手順がお粗末となれば本末転倒です。本作は手順も綺麗で実に清涼感あふれる作品になっております。

 24の合駒はなんでも良さそうですが、(イ)24他合は22銀、12玉、21銀不成、13玉、25桂で簡単に詰んでしまいます。21銀不成を許さない飛車合が最大の延命策です。
 短編の作品で合駒が出てきたら、それが限定されていること、そしてその合駒ののちの活躍が主題であることが大変に多いので、合駒が出てきたらなんとしても注目してみましょう。
 本作でも合駒の飛が以降の手順と密接に関わっていることがお分かりいただけるかと思います。

 さて今回は収束についての話です。
 13角成、同飛車あたりで本局の「魅せたいところ」である駒捌きは一段落したと判断すると、以降は綺麗な形でさっさとこの詰将棋を終わらせたいところです。以降の3手が収束らしい収束部分と認識できるでしょうか(まあ、このあたりの認識は人ぞれぞれなんで、明確に区別できるものではないと思いますが…)。
 最後の3手は捨駒ではありませんが、良い収束だと思います。
 初手以降、あまり活躍が目立っていなかった33の香車がトドメを刺すピッタリ感がいいと思います。詰め上がりで攻方の駒を余すところなく活用できていると、作品がグッと引き締まって見えます。
 捨駒は詰将棋の美学ではあるものの、捨駒だけが風呂敷を畳む手段ではないということがお分かりいただければ幸いです。

巨椋鴻之介氏作 (将棋春秋 1956/11)
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34桂、同金、23飛、12玉、21飛成、同金、34角成、11玉、12馬!、同玉、23金、11玉、21角成、同玉、22金打 まで15手詰


 これも有名な作品。形がきれいな器量良しさんはやはり良いですね。
 飛を成り込む軽快な序奏があり、その後34馬、11玉とした局面。12金打から精算しても駒が足りない。攻めが切れたように見えた局面で、12馬!の迫力ある飛び込みがありました。

 詰将棋では駒を取る手は俗っぽくて嫌われることが多いのですが、本作では2回も出てきます。しかしいずれの駒取りも全体の流れのなかで、自然に溶け込んでいるのであまり目立たず、嫌味な印象はあまり受けません。
 エグみを感じる駒取りと、感じない駒取り。何が違うのでしょう?うまく説明できません(汗)
 
 中心手が12馬だとすると、23金打ぐらいからが収束といえるでしょうか。
23金という手単独で見れば何の変哲もない手ですし、21角成も駒取りなので純粋な捨駒と同等の価値があるかいうと無いと言わざるを得ません。しかし詰め上がりはスッキリと最小限にまとまっていて、舞台装置を捌き切ったという印象をしっかりと受けます。そういう意味では上々の収束と言えるでしょう。
 風呂敷をたたむためには、なんといいますか、「流れに逆らわない」のが非常に大切なことでして、いくら捨駒が増えるとしても人為的な配置でゴチャゴチャなにか人的な介入を加えるのは興ざめだろうと感じております。

 収束以外の部分でも言えることかもしれませんが、いくらその要素が作品の評価上大切なものだとしても、それはあくまで部分に過ぎません。作品評価は最終的には全体の評価になります。全体の雰囲気を損なってまで何か手を加えるのはちょっともったいないかなあ、と個人的には思います。
2017/07/11

詰将棋鑑賞、超入門!

 先日、看寿賞の7手詰をツイッターに上げてみたところ思わぬ反響が。詰将棋ファンのみならず、将棋ファンの方にも解いていただけたようです。これは有難い。
 一方で、「解けたけどどういう意味での評価なのか分からない(意訳)」といった意見もあったようです。確かにそりゃそうですよね。

 というわけで、今回は「詰将棋鑑賞、超入門!」と題して、読めばそれだけで詰将棋の良し悪しがちょっとわかるようになる、鑑賞できるようになる。そんなふうな初めての方向け記事を書いてみようと思います。

 今話題の藤井聡太さんも詰将棋のプロフェッショナルとしても有名で、その解図力はもちろんのこと、創作、審美眼も一流のもの。空前の将棋ブームのすぐほど近くにある、この奥が深い詰将棋の世界を是非この機会に覗いてみませんか?
 マニアな皆さん、厳密に言えば違うだろ!という表現もあるかもしれないけど許してね。



■詰将棋鑑賞、超入門!
 この記事では、詰将棋を難しいかどうかだけで評価するのではなく、美しいかどうかで評価する観点の一端に触れようというコンセプトのもと色々書いていきたいと思います。。
「この詰将棋から何を感じ取ればいいんだろう…?」
「この詰将棋はどのへんが良くて褒められているんだろう?」

 そんな疑問に答える一助になれば幸いです。

 色々書きたいのは山々ですがまとまりがなくなりそうなので、これだけは覚えて帰ってほしい!というのを冒頭で掲げます。

1,詰将棋は作品であり、表現である!
2,解けなくて答えを見ることは後ろめたいことではない!
  作者コメントや解説を読んで、どんな表現物であったかを読み解こう。

 です。もうこれだけ伝わればそれだけでもいいぐらいです。

1,詰将棋は作品であり、表現である
 詰キスト(詰将棋が好きなひとたち)は雑誌の詰将棋を「問題」ではなく「作品」と呼びます。創意が込められた1つの表現物にふさわしい呼称であるということなんでしょうね。

2,解けるに越したことは無いですが、解けなかったら答えを見ちゃいましょう。
 詰将棋=上達のため課せられた、解かないといけない問題 って印象が将棋界隈では多かれ少なかれあると思います。宿題みたいなもんというイメージが詰将棋嫌いを加速させているんじゃなかろうか。
 現に、詰将棋を実戦のためと思ってやっていたときの自分は詰将棋大嫌いでした。解くものではなく、鑑賞するものと思うようになってから様相が一変したのもよく覚えています。嫌いでしょうがなくていやいや5手とか7手詰を解いていたときより、答えを見るようになってからのほうが解けるようになったのですから不思議なもんです。「嫌になるぐらいならすぐ答え見ちゃうほうがよっぽど良いよ」と誰かにもっと早く言ってほしかった笑




 詰将棋が作品であると書きました。作品というのなら、どうやって読解していけばいいのでしょう?以下はその読み解き方について話していこうと思います。

つくりものの2大要素は①オリジナリティと②お決まりの型(構成) であるとざっくり言ってしまいましょう。これを詰将棋にも当てはめてみます。

よい作品というのは、
① 作者が作品に込めた主張・主題がありつつ
② 詰将棋のお決まりのパターンに風呂敷をまとめている

 ものだとざっくり言ってみます。
 
詰将棋は体操の演技だとすると


 選手の演技全体    = 詰将棋1作の全体のまとまり
 その演技ならではの技 = その詰将棋の主張、主題、個性
 演技の流れ      = お決まりの型

 という対応になるでしょうか。
 ここで大事なのは「お決まりの型」というのが演技成立にいかに大切かということ。決して主題にはならないのですが、主題だけでは作品にならないのです。
 体操選手が鉄棒の上でいかに大技を繰り出すのだとしても、演技は始まりから終わりまで、鉄棒から手を離したあとのピタッとと止まる着地までを含めて全体で評価されます。

 オリジナリティがあるのかどうか(≒新しいのか、過去作と比べてどうなのか)という評価は、それは何作も何作も見て、その積み重ねで養われる鑑識眼です。こういうのはひとまずは専門家に任せておけばよろしい。私もわかりません。
 型を認識し、評価することができればもう6割方(チキって割合減らした)詰将棋鑑賞は終わっている…といっても過言ではありません。まずは型を理解しましょう。

 じゃあ型とはどういうものか。一例を示したいと思います。
1,序奏
 来るべき演技のピークのために、観客の気持ちをアゲていきます。
2,主題
 一番見てほしいところ。
「ここピークですよ」と伝わる表現法が望ましい
3,終わりへ
 詰将棋用語で作品のピークから終わりに向かっているプロセスを「収束」と呼びます。
「はい!フィニッシュ!大団円!わー!」というスッキリした終わりを提供しないとキレがよくありません。体操選手は着地を決めてこそです。

 なんだか普通なこと書いているように感じられたあなた、その感覚は正しい。普段のパワポでのプレゼン、漫画、小説、楽曲、ダンス…、なんにでも当てはまりそうな構成ですが、逆に言えば、人間が認識するという前提がある以上、どんな創作物であれその構成の根底は一緒で、詰将棋だって例外ではないということですね。

 手数(≒演技時間)によって構成は若干変わってくるものの、よくお目にかかる10手台の詰将棋(一番作品が多い手数区分)であればひとまずこの型で評価できると思っていいでしょう。 
 もちろん全ての詰将棋がこの型にピッタリはまるわけでありません。が、基本はこの型です。あとはちょっとした応用でイケるはず。中でも収束部分は95%の作品にあります。詰将棋は終わり方をメチャクチャ気にする競技です。詰将棋がよく体操の演技に例えられるのも、このあたりが影響しているのでしょう。

 ※残りの5%は収束がなくても許される、代わりの何かの主張・事情がある作品です。一般的な作品で収束がイマイチだと必ず指摘を喰らいます。

 話だけではつまらないので、詰将棋を一作見てみます。

初代大橋宗桂「象戯造物」第26番 13手詰

2017-07-11a.png

 52歩成、31玉、41と、32玉、24桂、同歩、42と、同玉、51銀、32玉、41角成、同玉、42金 まで13手詰

江戸時代の詰将棋です。歴史ありますね。解いていただいてもいいのでしょうが、今回は鑑賞メインということでさっさと作意順(=正解手順)を載せてしまいました。

 実戦に出てきそうな非常に端正な初形です。捨駒から考えたくなる私としては、初手51銀とやって31玉、41角成!、22玉と進めたくなります。そして以後届きません。「ははーん、なるほど、22玉のときに23地点が空いていれば23金と打てるってことだな。てことは24桂か!」
 紛れ(=詰まない候補手)にハマり、そこから正解へのヒントを得る…というのは、作者にとっては「そう辿ってくれると一番嬉しい解答の道筋」ということになりそうです。
 
 さて、我々は本作をどういうふうに評価していくのでしょうか?
 私は最初に「どこが主題かな?」と考えます。もちろん主題がすぐ分からない作品もあります。だから駄作or好作とは一概に言えませんが、主題がすぐ分かる作品は好作です。絶対です。
 そして本作。「24桂であえて23地点を空けるやりにくさ」。ここが作品の中心と感じました。作者もそう思っていたかは知りません。そして、仮に違っていたとしてもそれはあまり重要なことではない。見る人が感じたことはそれはそれで作品評価として正しいのです。それが鑑賞の世界です。

 もちろん主題では詰将棋にはなりません。24桂を打つまでの序奏も必要ですし、23地点を開けて息切れして詰将棋が空中分解…では困ります。詰将棋はきっちり詰めあげて初めて成立するのです。
 何度でも言いますが、「型」を評価すること、まずはそこから始めましょう。全体の評価は型でおおよそ決まります。

 さてあらためて作品を分解して、さきほどの表を本作に当てはめるとどうなるか、考えてみます。

1,序奏
 最初の4手(歩成~41と)
2,主題
 41角成ができない状態(=23地点への玉逃亡を防げない状態)にされてもなお、24桂を決行する!
 32とに23玉と逃げられてもうダメかと思っても、41角成、34玉、35金で捕まっている!
3,終わりへ(=収束)
 活用したと金を消し、角も消す。
 舞台装置を最速で捌き、最速で詰将棋を終わらせたからこそのスッキリ感。

 こんな感じでしょうか。
 
 本作は私も好きな作品です。ここまでの文章のまとめ的に、本作の好きなところを箇条書きで書いてみると、

・ すぐ見える51銀~41角成を最後までとっておく構成がいい。
・ と金をつくり寄せていく序奏は単純だが、41角成の邪魔となるようにと金を誘導されてもなお、24桂を決行するこの意外性ある呼吸リズムが新鮮である
・ 平凡にと金を使ったあとだからこそ、32との捨駒がより一層スカッとする。
 23玉と逃げたときの41角成がぴったり捕まっているのも良い。
・ 最後に出現した41角成が捨駒で、きちんと消えているのが良い。
 駒を捌ききってフィニッシュさせることは将棋の美学です。

 こうしてみると、主眼以外への評価がいかに多いか、いかに駒捌きを注目しているかがお分かりいただけるかと思います。「じゃあ主眼なんて要らないのか」というとそうではなく、前後の演出のおかげで、主眼が光ってくる(≒主眼が映えるように前後をつくっている)、また逆も然り、と理解していただけば。
 
42歩成~51との序奏部分は、いわゆる捨駒でも妙手でもなんでもありません。「そんなつまんない部分省いちゃえよ」と言われかねない部分でも、他の部分の関連性を考慮すると絶対省けない不可欠な序奏に化けて浮かび上がってきます。
 全体の評価というのは、部分部分の足し算ではなく、関係性の評価であるとも言えそうです。

 これらを踏まえてこの作品の短評を書いてみます。う~ん、そうですね…

 『23に金を打つ空間をつくるための24桂が好印象。個々の手はよくある手ではあるが、24桂決行のタイミングの取り方に意外性があり、新味を獲得できている。
 収束もばっちり大駒捨てで決まっている。お見事!
 洗練された初形配置と表現法は実に現代的であり、江戸時代につくられたとは思えない佳作と言えるだろう。』

 (え、エラソーだって?いいんですよ、作品は批評されるために発表されているんですから)

 こんな感じでしょうか。

 詰将棋ほど批評しやすいものはないと思います。なんてたって、詰め上がり図までのストーリーが確立されているし、駒が捌ければ嬉しいという気持ちは実戦派の皆様とも共有できる感覚でしょう。
 ある程度決められた型があるからこそ、詰将棋をストーリーとして認識することができるとも言えるかもしれません
 読書感想文のように詰将棋を語るのが我々詰キストです。




 以上、つらつらと書いてみました。いかがだったでしょうか?
「詰将棋やってるひとはこういう目線で詰将棋を見ていたんだなあ」というのが伝われば幸甚です。 
 ※あくまで私の見方にすぎないかもしれませんが!!!

 だいたいこの1記事で十分なぐらいにしたつもりです。さらにちょっと突っ込んだ各論的なものも、気が向いたら書きます。
 
 ああ、あと「詰将棋パラダイス」のオススメを。


 詰パラに載っている詰将棋は、正直簡単ではないもののほうが多いです。
 しかし、だからこそ解説はすごい丁寧になっており、随一の詳しさになっていると思います。詰将棋への理解はより一層深まることでしょう。今回でいう型の評価法を事前知識として仕入れておけば、詰パラ誌上の文章も頭に入りやすくなるはず。

 解ける方もそうでない方も、「読む」立場から詰将棋鑑賞の世界へ一歩踏み出してみませんか?

参考文献
 鑑賞物としての詰将棋作品論 會場健大氏
 http://p.booklog.jp/book/57240/page/1482767
2017/07/02

看寿賞

 7月です。夏っぽくなってきました。
 さて、このたび以下の作が平成28年度看寿賞短編部門を受賞いたしました。

上谷直希作 (詰将棋パラダイス 2016.1)
2016-04-03a.png

 ブログ内記事 → http://fairypara.blog.fc2.com/blog-entry-50.html

 こちらで本年度の看寿賞について取り上げるのは、選考記事などを読んでからにするつもりでした(そのほうが詳しく話せるでしょうし)。しかし私用もありましてしばらく詰パラを読めないことが確定してしまったので、取り急ぎご挨拶だけでも載せておこうとそう思った次第であります。

 詰将棋を初めてもうすぐ10年ぐらい。しかも10年といっても、普通詰将棋に全く手を触れていない期間が大半を占めます。入選もままならなかった自分が受賞するときが来るとは夢にも思わず、感慨深いです。
 フェアリーから学んだことがいかに多いか、ということでしょうね。本当にありがとうございました。

 また受賞コメントなどは詰パラ最新号に掲載されていると思いますので、そちらも見ていただければ。

 全国大会には参加予定です。大学の部活を去年の夏で引退したので、今年こそは行けます。よろしくお願いします。
 名古屋初上陸なので、名古屋の美味しいお店とか教えてください笑

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○看寿賞受賞作
 詰将棋メモ 平成28年度看寿賞
 詰パラHP 「看寿賞のページ」

 中編部門、長編部門受賞のみなさま、おめでとうございます!
 納得の受賞作ばかりですね。記事を読むのが楽しみです。ああ、早く読みてぇなあ…。

 なんか春にお会いした方々ばかりでびっくりしております笑
 またお会いできれば嬉しいです。