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2019/08/14

透明駒はじめてガイド

最近は透明駒の露出が増えてきたような、そんな追い風の気配があります。
 
 ルールについてたくさんの方が説明していらっしゃる記事もたくさんあります。ただ、厳密なルール記載については、WEB上でしっかりとしたものは少ないようです。
 ※書籍であれば、『この詰将棋がすごい!2015』の會場氏の原稿が一番詳しいと思います。
 (私はそれを読むまで透明駒のルールはさっぱりでした。購入方法については詰パラ7月号『ちえのわ雑文集』などをご参照ください)

 引用ばかりになってしまいますが、WEB上で透明駒についてまとめているサイトのリンクをこちらに載せていただいたり、ルール記載についてもまとめさせていただこうと思います。
(2020/02/29追記)下にルールもまとめておりますが、多分はじめに文章のみのルール説明だけ読んでもちんぷんかんぷんになってしまうのではないかと思います。
 実際の作例がルール理解の大きな助けになるはず。はじめは下にご紹介しているリンク先で作例を確認し、それと照らし合わせる形でルールも確認するという順をおすすめします。


【透明駒についてネットで読めるもの】

透明駒をはじめから(mixi内) 
 高坂研氏

 その名の通り、透明駒をこれから始めよう!と考えていらっしゃる方には最適です。
 高坂さんお得意のレトロについても触れられています。

詰将棋における透明駒の説明(詰将棋日和)
 時風瑞季氏

 ルール解説を例題を用いながら端的に的確にまとまっています。
 読みやすいのが良いですね。

透明駒のご紹介(WFP83号内 リンク先72p~)
 會場健大氏

 ルール解説に重きをおいている記事です。
 解答記載のときにも役立ちそう。

自分なりの透明駒の門戸 (WFP91号 リンク先38p~)
 上谷直希

 一番読み物テイストに徹している!?
 会話形式なので読みやすいかなあと思う反面、ルールについて体系的には述べられていません(致し方ないか)。他の皆様のルール解説とあわせて読んでいただければ……。

(短手数の例題のまとめ)
 透明駒ことはじめ1手3手【出題編】
 透明駒ことはじめ1手3手【解説編】
 透明駒ことはじめ1手3手【かしこ編】(いずれも当ブログ)

 1手詰から掲載。作例は多め。一通りの手筋を登場させたつもり。

【透明駒のルール】
透明駒のご紹介(上記リンク先と同様)より引用

 2019.8現在では少し状況が変わっている部分もあると思いますので、恐れながら私の方で追記させていただいている部分もあります。赤字部分が上谷による追加です。

1、【透明駒の定義】
 透明駒は位置、種類が不明の駒。40枚のうちのいずれかであることと、先後それぞれが出題図の局面において所持する枚数のみ既知。
付則
1.1 (位置の定義)
「位置」とは、盤上の 81マスと双方の駒台2ヶ所の計83箇所である。
1.2 (種類の定義)
「種類」とは、成生を区別した計14種とする。
2、【透明駒の表記法】
 透明駒の棋譜表記は「-X」とのみ表記するものとし、位置や成生右左などの併記は一切不可とする。ただし、普通駒が透明駒によって取られた場合に限り、その位置を表記できる。
 ※Problem Paradiseなどでは「-X」ではなく「-I(Invisible)」という表記が採用されています。
 現在では完全になにかの表記に統一されているわけではありませんので、XやIのどちらの表記法を使っても問題ないと思います。

3、【着手の原則】
 それが不可能であると証明されない限り、双方の手はすべて合法手であり、また先手の手はすべて王手であるとみなさねばならない。
4、【透明駒の可視化】
 ある透明駒の位置、種類がともに一意に定まったならば、その時点でその透明駒は普通駒となり、以後透明駒の表記法による制約を受けない。
5、【詰みの定義】
 詰み、その他各種の達成条件は証明されねばならない。



(Q&A)
Q1 透明駒が双方に何枚いるかの表記法は?
  例えば3手のばか詰で、透明駒が攻方にN枚、受方にM枚ある作品の場合、
   ばか詰 3手(N+M)と表記することが多いです。
   透明駒が攻方に1枚、受方に0枚ならば(1+0)という表記になりますね。
  
 ただ、もっと分かりやすく「透明駒:攻方N枚、受方M枚」と表記しても問題ないと思います。
 
Q2 透明駒が持駒にいる可能性があるときの持駒の表記法は?

 見える駒(透明駒以外の普通駒)のみの表記となります。
 例えば攻方の持駒に歩と透明駒が1枚あることが分かっており、受方に持駒制限のない作品の持駒表記は、

先手:歩
後手:残り全部

 としてください。後手の持駒を全て表記(ex:飛1角2金4銀4…)してしまうと、透明駒が消去法的にバレてしまい(ex:「飛が1枚無い!つまり透明駒は飛っぽいな!」)、出題になりませんので笑

追記:上の内容に関係があるかどうかは分かりませんが、現行のルールでは透明駒余りが許容されていることも付記しておきます。

Q3 透明駒の駒種には玉も入る?

 入ります。
 双方の玉が透明駒として存在する、双玉作品の出題もありました。
 
Q4 持駒制限があった場合の透明駒の駒種はどうなりますか?
 
 特別な記載がなければ、40枚のうちのどれかとという解釈で、多くの場合大きな問題にはならないと思います。
 そうでない作品の場合は出題時に説明があるでしょうから、それに従ってください。

Q5 駒取り時の表記法は?
 
「+(駒取り地点)」と表記されることが多いです。
 ただ、Problem ParadiseなどではIx(駒取り地点)という表記になります。

(例)こういう順の3手詰があったとします(駒余りなので詰将棋ではないんですけど)、
ばか詰 3手(1+0)

2019-08-14a.png

【協力詰(ばか詰)】先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。

 -X、12銀、+22 まで3手駒余り という作意表記になりますね。
(13龍、12銀、22龍という手順を想定しています)

 一方Problem Paradise表記(すなわち、本家であるチェスプロブレムに近い表記法)で同じ手順を書くと

 -I、12銀、Ix22 となります。

 見た目は異なりますが全く同じ手順のことを指しており、どちらの表記を使っても構いません。

Q6 「双方の手はすべて合法手」とはどういう意味?
 
 この概念には少々ややこしいところがありますので、まずは下の図をご覧ください。

ばか詰 1手(1+0)

2019-08-14b.png

-X まで1手
 
 -Xの王手候補としては、12(飛、金、銀、香、歩、各種成駒)、23(桂)で全てです。
 この王手が持駒由来や盤駒由来かどうかさえも分かりません。ただ、どの可能性であっても詰みであることは変わりませんね。
 
5、【詰みの定義】
 詰み、その他各種の達成条件は証明されねばならない。

 に従い、すべての着手可能性で詰みを確認できたので、この作品はこれにて1手詰となります。

……ただ、1つだけ疑問が残ります。
 
「持駒が歩であったら打歩詰の反則じゃないの?」

 これはその通り、初手に反則手の可能性が混じっているじゃないか!?これはどうなるんだ?という疑問です。

 反則手が混じっているからこれは不詰図!?……いえいえ、そうは考えません。
 ここで「指せた手は合法」の概念が役に立ちます。

先手が-Xと宣言する。この瞬間に、この手が合法な王手であることが保証されます。よって、-Xの着手候補のなかから、12角といった非王手や、12歩打といった非合法な王手の可能性が消えるのです。

 すなわち、
→すべての可能性が残っていると考えると、出題図(0手目の時点)ではX=持駒の歩の可能性は当然加味される
→初手-Xとする
→局面、手順の合法性を守るため、X=持駒の歩の可能性が消去される

 という、時系列的には逆立ちした論理展開が生じます。
 この”逆立ち”感が透明駒作品の特徴で、ここが面白いのですが、なにぶん分かりにくいため入門の妨げとなりやすいのが泣きどころです。

 この概念をより発展された作品は多数発表されておりますが、そのなかでも短手数かつ論理が明快、作者解説も充実しているということで以下の作品を引用させていただきます。

 高坂研氏作 (WFP105号 教材に使えるフェアリー作品展)
ャ

 詳細は結果稿(WFP107号 55p~)をご参照ください。

Q7 透明駒は判明させないといけないの?
必ずしもそういうわけではありません。Q6での例題のように、最後まで透明駒が透明駒のままで詰みに至る作品も多くあります。
 ただ、透明駒を判明されることが、詰みの利益になる作品が多いのも事実です。

宮原航氏作 ばか自殺詰 4手 (0+1)
(初出はTwitter? 『この詰将棋がすごい!2015』より孫引き)
2019-08-14c.png

【自玉詰】自玉を詰めることを目的とする。

(A)99角、+99、22金、+22 まで4手

 単純に初手から(A)22金、+22 と進めても、22地点の透明駒が何であるか分かりません。その駒がそもそも王手をかけているかどうかも断言できないくらいです。
 初手99角!がここしかない限定打。
 上記の4手により、99地点→22地点へ透明駒は移動したことになりますが、こんな動きができるのは角か馬しかないのは分かります。もう少し考えると、99地点の角を取る駒は横利きか縦利きを有するしかない(99角という王手駒をナナメから取ることはできない)ことも分かってきます。
 これらの証拠より22地点の駒が馬であることが証明され、詰みとなります。

※(A)88角、+88~では、受方透明駒が99地点に配置された角であった可能性が消えず、4手目の時点でI=馬であることを断言できないため詰みとは言えません。
※+22と着手することで上記のような情報が得られる。すなわち、4手目を指そうとする時点では透明駒が馬であるとは分かっていないわけなので、4手目の表記を「同馬」とすることはできません。X=馬と扱えるのは4手目を指し終わってからの話です。

 一方で、透明駒を判明させないことが利益となることもあります。

岡谷阿矢子氏作(Problem Paradise ,Shogi, U191)
 かしこ詰 7手  (0+1)

2019-08-21a.png

※かしこ詰。玉方は普通詰将棋と同様に抵抗してきます。

(A)24桂、-X、31銀、-X、21金、同玉、22銀打 まで7手

 詰ませる対象の駒が見えません。受方の1枚の透明駒は玉を指しているということですね。
初手からいきなり(A)11銀や(A)13桂とすれば、玉位置が確定し玉の透明駒を剥ぐことが可能てすが、玉が透明駒でなくなってしまえば普通詰将棋と一緒ですので、この裸玉を小駒だけで捉えるのは難しくなってしまいます。
 初手は24桂。これならば玉位置は確定せず、相手玉は透明のままです。いくら透明玉とはいえ、玉の性能では自身に王手をかけている桂を取り返すことは不可能ですので2手目は-Xとするしかありません。3手目31銀に対しても同様です。
 そして舞台が整ったところで、5手目21金と満を持して玉位置を確定させます(21の金が王手をかけているとすれば、玉位置は11しかありません)。よって5手目を指した瞬間、相手玉は透明駒ではなくなることとなりますので、6手目は宮原氏作の4手目とは異なり、「+21」ではなく「同玉」と表記することができます。
 途中まで、敢えて玉位置をぼやかしながら手を進めるのが攻方の利益につながるのですね。

 その他、透明駒が複数の可能性を同時に併せ持つことも可能であり、それが利益につながることもあります。分かりやすい言い方をすれば、「透明駒が作意・変化・紛れで別の駒となりうる」ということです。

例題:かしこ詰 3手(1+0)
rereere.png

(A)52銀打、(イ)同金右、72銀成 まで3手
  
 初手52銀打に対して後手はどちらかの金で取り返すしかありませんが、どちらの金で取ったかを確認してから、どっちの銀で開き王手を行うか決めるのがミソ。(イ)同金左ならば32銀成まで。
 先手が所持している透明駒は1枚。飛(or龍)の存在を銀の開き王手で主張するにしても左右どちらか一方でしかできないわけですが、相手の応手(同金右?or左?)を見た上で開き王手の左右を決定する"後出しジャンケン"によって左右どちらの開き王手パターンにも対応可能となるわけですね。
 「透明駒は1枚だが、右にもいるし、左にもいる……?」という錯覚に陥ること間違いなし!?
 
※(A)72銀成、61合、52銀打では、同金右と対応してくれたならば作意と同様の詰みですが、当然同金左とされて詰みません。作意順と比べてみてください。

 上記の例題はミニマムな表現でしたが、このような狙いをより発展させ、より鮮やかに表現した作品もあります。ここでも1作引用させていただきます。

高坂研氏 かしこ詰(1+0)
 「透明駒をはじめから」内 (mixi)

10857363_2313191581_186small.jpg

 詳細は透明駒をはじめから(5) をご参照ください。


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 ルールを厳密に取り扱おうとすると、今度は例図が少なくなり読みにくい…
 一方で読みやすい記事にしようと思うと、ルールの厳密さの説明があやふやになるリスクがある…とまあなかなかに透明駒の説明は難しいのですが、やはり一番の入門はたくさんの作品に触れることだと思います。

 幸い、透明駒はたくさんの作品の紹介・解説についてネットに纏められており、それらの解説に恵まれているルールだと思いますので、是非上に挙げたリンク先もチェックしてみてくださいね。
 そして、「あれ、ここはどういうことなのかな?」といった疑問点があったら、私やその他透明駒を得意としている方に質問してみてください。

 とまあ、取り急ぎ色々書いてみましたが、その他、必要だと判断した内容に関しては適宜追加していくつもりです。
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