ツイン

フェアリー
12 /07 2015

 次の記事に入る前に、ツインあるいは複数解の概念を考えていきましょう。

 この記事を書くために事前にいいページが無いかネットサーフィンしてみたのですが、意外と体系的にまとめているページがないもので困りました。ツインとは要するに、似たような局面図で2つの解を求めてもらう方式のことを言います。複数回ならば文字通り同一の局面で複数の解を求めてもらいます(間違ってたらごめんなさい)。
 その出題法に対しては、「単純に詰将棋を2題出題するのとどう違うのか」という疑問が当然生じます。
 作品をツインで出したからには、単純に別々のものとして2題出題する以上の効果を求めていかねばなりません。そうでなくては、ツインで出題した甲斐が無いのです。フェアリストは毎回毎回変なルールをこねくり回して解答者を混乱させる存在です。その解答者の苦労に報いるためにも、その作品ではそのルールを使わねばならなかったと納得させるだけの手順を用意するべきだと思っています。

 では果たしてツインという出題法では、どんな演出効果を期待できるのでしょうか。
 TTT02(課題 複数解またはツイン)の選評のなかで、ジャッジの高坂さんはこう仰っています。

(一部引用)


 複数解(あるいはツイン)というのはチェスプロブレムの世界から拝借したテーマだ。特にヘルプメイトでは既にそれが標準設定となっており、複数解(或いはツイン)でない作品を探すのが難しいくらいである。
 では、彼らがそれほどまでにこの構成法にこだわるのは何故か? それは一言で言うと、単解では表現不可能な解同士の有機的な関連性を表現できるからだ。キーワードは「対照性と統一性」。


 「有機的な関連性」、「対称性と統一性」。以上の2点。ここです。要するに2解の双方を比較したいし、対立させたいのです。そのためにはその2解が散漫に独立してもらっていては困るし、完全に同一でも困る。
 同じ上で、違う。そんな表現をしたい手法というわけですね。

 以上の点を踏まえた上で、どんなツインが悪くて、どんなツインが良いのか、「比較」していきましょう。

○悪い例    辛辣だ
 当時中学生。本当の本当に駆け出しの頃の自作です。いやー、清々しいくらい無知です汗

 Web Fairy Paradise/2009年3月

 協力詰 5手(2解)


2015-12-07b.jpg

A)42角成 35玉 26龍 34玉 24龍 まで 5手
B)59角 66角 同龍 47玉 36角 まで 5手

 (A)の手順と(B)の手順になんら関連性が見当たりません。強いて挙げるとすれば、角が上に行くか下にいくかにほんの少し対比効果があるかも…ぐらいでしょうか(それさえ無かったら、いくら駆け出しとはいってもさすがに投稿してなかった……はず……)。しかしそれ以降の展開は全く別々のもので、これでは「普通のばか詰を2題解いただけ」と言ってもらえたならばまだいいほうで、「2解のうち片方は余詰で、余詰消し置くの嫌だったんでしょう?」と言われても仕様がありません。
 まぁ、こんなのでも一応は自分の通ってきた道なんで、目を背けては可哀想ですね。背けたいですけど…。

 ※確か、かつてTTT02にも不出来な代物を出してしまったような気がします。これも目を背けたい。

 ○良い例

 山田康平氏作 (詰将棋パラダイス/2003年3月) うるてぃめいと No.198

 詰将棋 5手 (ばか詰じゃないです!)

2015-12-07a.jpg

A)上図
B)持駒桂 → 騎(Knight。八方桂)

 (A)47桂 同龍 57馬 同龍 45馬 まで 5手


 (A)はどこにもフェアリー要素がない正真正銘の普通詰将棋です。上の手順をよく覚えておいてください。

 さて(B)図。局面がそのままで、持駒が桂から騎(ナイト)に変わっただけです。
ナイトはフェアリー駒のなかでは比較的メジャーで、将棋の感覚からそれほど逸脱した奇想天外の利きでもないように思います。

kn (1)

http://www.abz.jp/~k7ro/rule.htmlより

 この八方桂の利きが示す通り、騎は性能としては桂の完全上位互換と言えます。

 出題図に戻りましょう。騎は桂の完全上位互換なのですから、桂馬にできた(A)の手順を騎でできないはずがないと思いませんか?
 ところができないのです。
 
 (B)47騎 同龍 57馬の瞬間に同龍ではなく46騎!の逆王手がかかってしまいます。桂ではこの逆王手は起きませんね。
相手の手に渡るのが桂か騎か、この違いで両者の立場の逆転が起こっているのです。
 いや~面白い。

 よって(B)では(A)の手順で詰めることができず、桂ではできず騎ではできる代わりの手順を別に探すことになります。

 (B)17馬、同香成、14騎、同銀、24馬 まで5手詰

 (A)では左に、(B)では右に飛ぶ馬がいい感じです。

 完全上位互換/下位互換という関係性は、必然的に「有機的な関連性」を想起させます。そして逆王手の発生の如何で鮮やかにその両者は区別されます。しかも、下位互換のほうが優位になる形で。

 (A)の条件では(B)の手順ができず、(B)の条件では(A)の手順ができない。「対照性」の1つの表現法と言えるでしょう。
 そして(A)(B)それぞれが唯一解になる排反のプロセスに関しては、「少なくとも類似局面での比較対照実験としてはロジックが関わっており偶然の産物ではない」ことが示されています。この事実がツイン作全体としての「統一性」の説得力をより強めるため働いてくれることに疑いは無いでしょう。
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自称フェアリストです