透明駒各論

透明駒
09 /28 2016

 とり研で透明駒についてもお話させていただいたのですけど、どんな話をしていたのか、その一部をざっくりご紹介させていただきます。

 今回の記事では、透明駒が初めての方でもなんとなくは伝わるような文章にしてみたつもりです。

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 透明駒とは、盤にあるか持駒にあるかも分からない透明な駒です。
 ただ、透明駒を着手したこと、透明駒が駒を取ったことだけは分かります。そして着手を重ねていくなかで、駒種と位置の両方が判明すれば透明駒ではなくなります(そりゃそうか)。

 例えばこんな図があったとします。
2016-09-28f.png

 (0+1)というのは詰方に0枚、受方に1枚透明駒があるという意味。
 
 透明駒が無い局面として考えると、16金までの1手詰となりますが、透明駒があってはそうはいきません。それに対しては「+16」と返されます。16地点で透明駒が駒を取ったということです。この着手の時点では、透明駒は位置は分かったけど駒種は分からないという扱いになります。

 同じ要領で、今度は「24銀、+24、16金、+16」としたとしましょう。
 相手の透明駒は1枚なので、1枚で金と銀を取ったということになります。これが可能なのは桂馬だけ。駒種が確定して、地点も確定したのですから透明性は喪失して今現在の初形はこんな局面ということになります。

 これを応用して詰将棋をつくるとしたら、たとえばこんな感じ。

【例題】
2016-09-28h.png

ばか自殺詰 = 王手の連続で自玉を詰ませる。
46銀、+46、58金、+58(同桂成) まで4手詰

 同一作があるかも。
 透明駒を判明させれば詰将棋も解けるといった方針の創り方も多いです。

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さてもとの局面に話を戻して、「ここで透明駒が2枚ならどうなるのだろう?」と考えました。つまり盤面はそのまま、受方の透明駒を2枚に増やし、「24銀、+24、16金、+16」と同様の手順をしたとして、
 
2016-09-28a.png


こんなふうなのか


2016-09-28g.png

こんなふうなのか


 つまり①金と銀をそれぞれ別の駒で取ったのか、②一枚の駒が両方を取ったのか分からないではないかと思ったのです。当然、分からないので透明駒は透明駒のまま。確定するまでは透明性は消えませんね。

 解決案は簡単で、持駒にもう一枚銀を増やして、もう一回24銀としてしまえばいいのです。②のほうの局面ならば、二回目の24銀は駒がいるところに駒は打つ反則。逆に言えば24銀を打てた時点で②の可能性は否定される。玉方は1枚の透明駒で金銀を連続で取ったと言わざるを得ません。つまり、二回目の24銀を打った瞬間16X=16桂が確定する、というロジックになります。
 こうやって「手順から透明駒のヒントを得ていき、透明駒の正体を探っていく」のが透明駒を解図・創作していく上での基本姿勢ではないかなあと思っています(もちろん、透明駒を判明させるのが目的でない作品もあります)。

 同一地点の捨駒を繰り返し、複数枚ある透明駒を区別しようとする狙い。この狙いを実際に活用してみたのが以下の一作です。

上谷直希作  第76回WFP作品展
2016-09-28b.png

 
 創作上は33の玉が非常に重要な役割を果たしています。
 透明駒で自玉が配置されていれば、その自玉を使っても透明駒の情報を得ることができるということを是非覚えておいてください。

 初手は13歩。これは打歩詰ではありません。
 透明駒の存在下では、「着手可能ならばどんな王手をしてもいい」という大原則があります。この鉄則を本作に応用してみると、13歩と着手できた時点でこの手は合法であり、後手側としては13地点に透明駒の利きがあることを勝手に決められてしまったということになります(13地点に透明駒の利きが無いことを証明されてしまった後では、13歩という手は正真正銘の打歩詰となり指せません)。

 一見無理っぽい着手を敢えて選択するのが透明駒解図のコツです。透明駒の判明により効率よく近付けるというわけですね。

 13歩に対しては+13(13地点で「同透明駒」ということ)しかないですね。あとは冒頭で述べた「同一地点への捨駒」になるように、24桂、+24、13歩、+13と捨てていきましょうか。

 ……はい。これで2枚の透明駒それぞれの種別がほぼ決まりました。
 たったこれだけの手順で、です。

 順を追って見てきましょう。
 
 2回目の13歩をしたおかげで、2手目と4手目が同じ駒であることが分かりました。この透明駒をA、残ったもう一方の透明駒をBと呼ぶことにします。
 Aは少なくともナナメ前に利きを持ちます。そして2回目の13歩を決行したとき、Aは24地点にいます。

2016-09-28e.png

 王手放置は反則ですから、Aはナナメ後ろへの利きを持ちません。
 よって、Aは金(もしくは小駒の成駒)であることがわかります。
 Aが金なのか、と金なのか、成桂なのか、そこまでの情報は必要ありません。必要だったのは、Aがナナメ後ろに利きを持たないということ。つまり、6手目の+13はAによるものではなく、Bによるものだという情報です。

 Bは何でしょうか?そもそも、Bはどの地点から13へ移動してきたのでしょう?
 21地点からの「同桂」でしょうか?しかしこれは初形から王手がかかっていて初手の13歩が王手放置の反則です。23地点からの同金(その他諸々の駒種)も、同様の理由でありえません。
 24地点が埋まっているので、銀や角の可能性も無い。

 よってBは1筋にいる飛車(龍)か金です。

 しかしよく考えてみると、Aがもともと居た地点は14でしかありえないことも分かっています(23地点なら初形で王手がかかっていることになる。双玉配置での透明駒の意義がここでも発揮されますね)。よってBは15~19にしか初形で存在できません。

2016-09-28d.png

 15~19地点から13地点の駒を取れる駒は飛車か龍しかありえません。

 6手目+13の時点ではBの成生は分かりませんが、同銀成と取ってしまえば飛車が手に入ることに違いがありません(持駒になった時点で、Bの透明性は消失します=普通の飛車として使えます)。

 あとは収束。

 作意順:13歩 +13(=A)24桂 +24(=A) 13歩(24のA=金or成金) 同B(=龍or飛)
同銀 同玉 12飛 同玉 22角成 まで11手


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 各論ということで、テーマを思いつき、そのネタで作品をつくる過程をご紹介させていただきました。「こうしたら透明駒はどういう挙動をするんだろう?」といった素朴な疑問から作品のネタが生まれるということ、ネタはまだまだそこらじゅうに転がっていることを伝えられていたらいいなと思います。
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コメント

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No title

この13手詰は、1度は最終手まで読んでいたのに不詰と判断したという悔いが残る1局です。私は透明駒それ自体は他のフェアリー駒と変わらないと思うのですが、ある手で桂でないと証明された透明駒(覆面駒)はその後の手順でも絶対に桂になることはないというところがポイントかなと思いました。
もしよろしければ、駒の種類だけ明らかになっている駒を作ってみてはいかがですか。名称はどうなるのかな。
あっそうそう、半期賞おめでとうございます(一度は取りたいなぁ)。今後のさらなるご活躍期待しております。

No title

挑戦していただいていたようで感謝です。
情報が蓄積していってついに正体が判明するといった展開が好きですね。

駒の種類だけ明らかになっている駒ですか。
名称は「潜伏駒」とかでしょうか?…ネーミングセンスいまいち?

普通詰将棋のほうも頑張っていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

ue

自称フェアリストです